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あかつきの少女たち Marionetta in Aurora.
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「君の名前は?」

 白衣の男が尋ねた。

「モモです」

 少女は答える。

「モモ、君は一体何だ?」

 男は尋ねる。

「次世代型人工義肢・サイバネティッスATD-06。担当官、蔵馬辰己」

 少女は答える。

「私は日本国家と国民に忠誠を誓います」

 少女は誓う。





 国立児童社会復帰センター。
奥多摩の奥地。山を切り開いて作られた、広大な施設だ。
 病気や事故によって日常生活を送れなくなった子供たちや、児童虐待などで心に傷を負った子供たちのリハビリテーションと社会復帰の促進を促すために作られた、国営の社会福祉組織である。
 ここに傷を負った子供たち全国から集められ、自然に触れ、互いに協調し合い、高度な医療とカウンセリングを受けながらのびのび健やかに生活している。
 ――というのが、国が国民に向けて触れ込む、このセンターの内容だ。
 では真実はどうなのか。
 ここは、ある技術の研究と試験、運用の為に作られた秘密諜報・研究機関だ。
 その技術とは、義体化技術。
 イタリアで開発され、数年前に技術交換と多額の非公式な資金援助によって日本に入ってきた新技術だ。
 人間の身体パーツを人工物と入れ替え、人ならざる膂力と瞬発力を与える。加えて薬物と洗脳によって『条件付け』と呼ばれるプログラミングを施し、担当者の命令に我が身を省みず服従するサイボーグを創り出すのだ。
 その被検体は年の若い女性が最も適合率がよく、その為に社会福祉を謳い子供を集める施設を作ったのだ。
 まるで漫画やアニメの世界だが、これが実際に運用されたイタリアでは、義体研究から得た技術で先端医療の分野では目覚ましい発展を遂げ、そして国内対テロ作戦においても多くの実績を残している。
 ならば使ってみようというのが為政者の考えることだが、やはり少女をモルモットにしての人体実験は世間体が悪すぎる。イタリアでも研究は秘密裏に行われた。
 だから義体の研究・運用は、日本政府の人間にも総理大臣と少数にしか知らされていない。
 対外的には研究は社会福祉を名目にして、運用は将来創立される予定の日本版CIAの仮組織を隠れ蓑にして、国立児童社会復帰センターは運営されているのだ。
 当然、ここに勤める職員たちも、いわゆる普通の就職活動を経てここに来たのではない。
 全員が、何か問題を抱えてここにいるのだ。
 それは蔵馬辰己も例外ではない。
 センター内にある医療棟。義体の修繕や条件付けを行うのもこの施設である。

「モモの具合は?」

 蔵馬は病室の質素なベッドに寝かされたモモを見下ろす。
 静かに寝息を立てるモモの左肩には手術痕の影も無い。昨夜の銃撃戦でライフル弾を掠ったと言うのに、綺麗な丸い肩があるだけだ。


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