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あかつきの少女たち Marionetta in Aurora.
01
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――私は何なのだろう――?
――私は誰なのだろう――?
――私は何時死ぬのだろう――?
――私は何処にいればいいのだろう――?
――私は何故、生まれたのだろう――?





* * *





 海に近寄るのは、貧乏人と犯罪者と日本人だけ。
 そんな言葉を昔誰かから聞いたのを、蔵馬辰巳は思い出していた。誰から聞いたのかまでは記憶から引き出せない。
 なるほど、今の状況を慮ると確かにその通りである。
積まれたコンテナは、これから日本中に散らばっていく様々な物資の山だ。食品衣類雑貨に麻薬に武器弾薬。豊かな生活を夢見て、コンテナの中にこっそり隠れる密入国者。
 それらを荷卸しする悪者たち。
 そして、そんな連中を片っ端から見つけては潰していく自分たち日本人。
 温く濃い潮の臭い。小さく砕ける細波の音。
 ここは東京湾に数あるコンテナワードの一つ。
 コンテナヤードへ続く海沿いの道路脇に、黒のホンダ・ヴェゼルが停まっている。
 右こめかみに傷のある若い男――蔵馬が、ボンネットに腰を掛けて煙草を飲んでいた。

「クラマさん、今日の相手は密輸業者ですか?」

 助手席に座っている少女が、開いた窓から彼に声をかける。歳は一五歳ほどだろうか。学校の制服らしきブレザーを着た、美しい黒髪の少女だ。
 星一つない暗い夜空に煙を吐き、蔵馬は首を振る。

「一応今回の俺たちの目標は、武器を受け取りに来るテロリストだ」

「なら売人は無視するんですか?」

「向こうが無視してくれるならな」

「つまり全員やっつければいいんですね」

「いや、最低一人は残せ。情報を聞き出さないといけないからな」

「分りました」

 蔵馬の着崩したスーツのポケットから、携帯電話の着信音が鳴った。短くなった煙草を手のひらで握り消し、携帯を取り出す。発信者は常盤と表示されている。

『蔵馬、連中が来た。こっちが当たりだ』

「了解。すぐに行く」

 蔵馬は電話と拳の吸い殻をポケットに戻し、車から腰を上げた。

「モモ、行くぞ」

「はい、クラマさん」

 モモと呼ばれた少女は笑顔で頷く。そして抱えていたイスラエル製自動小銃タボールAR21のコッキングレバーを静かに引いた。





 コンテナヤードの片隅。男が十五人、陰に隠れるようにして集まっていた。
 静かに、しかし忙しなく動く五人と、それを眺める十人だ。
 大陸から送られてきた膨大な貨物に紛れ込ませた、彼らの「商品」を荷卸ししているのだ。

「こんな骨董品ばっかり仕入れて、あんたら原始人と戦争する気か?」

 荷卸しを指揮する壮年の男が肩をすくめる。
 今回の荷物は世界中で弾をばら撒く名銃AK-47のコピー品が十
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