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あかつきの少女たち Marionetta in Aurora.
01
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 人は最低限度、出来るだけ人目に付かないように動いて、さっさと仕事をし、誰にも見つからないように帰る。
 見張りは現場に置くのではなく、この取引現場に通じる道路に配置して、警察車両が通った時にだけ連絡を入れさせるのだ。そして、その見張りからは連絡が入っていない。
 恐らく、捕まえたのは堅気の人間だ。

「そいつだ」

 リーダーの男が小銃の銃口で指した方から、少女が一人、下っ端テロリストに連れてこられていた。制服姿に背中にギターケースを背負った、綺麗な髪をした目見麗しい美少女だ。
 怯えた様子で男たちが手に持つ小銃を見て、自分がどういう場所に紛れ込んでしまったのかを察したようだ。
 やはり一般人の、しかも子供。決定。もう二度とこいつらに物は売らん。
 殺気立つテロリストに代わって、彼女に話しかける。

「お嬢ちゃん、何しに来たのかな?」

「え……あの、わた、私……ギターの練習をしに、き、ました」

「そうかそうか。精が出るね」

 深夜のコンテナヤードなら人もおらず、誰にも迷惑をかけずに好きなだけ楽器の練習が出来るだろう。自分も若いころ、ギターに夢中になった時期があったが、練習場所を探すのに苦労したものだ。彼女の深夜の散歩、とてもよく理解できる。
 だがしかし、選んだ場所が最悪だった。
 男は微笑みながら、少女の正面に歩み出る。

「だがね、ここは私有地だ。勝手に入ってはいけないよ」

 近くで見ると、ますます美しい娘だ。売ればいったい幾らになるだろう。少なくとも中古品を細々としか買わない、チンケな日本人を相手にするよりかは稼げるはずだ。全く、できれば別の機会に会いたかった。
 取引現場を見られたら殺すしかない。生かしておけば、どうしたって必ず足がつく。
 そうすれば、自分は逮捕され、貨物は押収され、本国のお偉いさんは怒り狂う。結果出所と同時に、見せしめとして「暴走車」に轢き殺されるか、何処かの海岸で水死体として発見されるだろう。
 お偉いさんの虫の居所が悪ければ、拉致監禁拷問されてから粉砕機にかけられ豚の飼料になることだって十分あり得る。
 殺すリスクと生かすリスク。生かす方がわずかに上回る。
 男は懐からロシアの自動拳銃マカロフを取りだし、少女の額に照準を合わせた。

「来世(つぎ)からは気を付けるんだよ?」

「ええ、貴方も」

 引き金が引かれたマカロフは、まるでカメラの向きを直す様な、恐れも躊躇もない少女の左手で左に逸らされていた。当然、弾は外れる。

「あっ……」

 弾が少女の脇を通過した時、彼女の右手はブレザーに隠された腰のガンホルスターに回っていた。
 抜かれのは自動拳銃ベレッタPx4 storm SD。
 そして、銃声。





 テロリストと
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