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バカとテストと白銀(ぎん)の姫君
第17,5話 奇襲的外交、そして…
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の度會家はそれを支えてきた家柄だ。
いかに時が流れ、外交官に官位や爵位が不要になったこの現代日本であっても、母さんが父さんの姓を名乗るようになったことで妃宮家が断絶することになったとしても、外交官であることは代々抱え続けて来た未だに変わることない「名家の誇り」なのだ。

それが例え、母さんが心の闇を抱え込み、父さんが職務で世界を飛び回っているという建前のもと、心が病んでしまった母さんから逃げまわり家を顧みることをしなくなったしても、だ。
「僕が妃宮を名乗っているなんて、皮肉なものかもしれないな。」

突如、甲高い電子音が勢いよく鳴らされた。
何かの合図なんだろうけれど、座っている僕からは何であるのか分からない。
「良い外交とは49:51で物事が決まること、そんな言葉をまさか思い出すなんてね。」
あの交渉において僕は明らかにやりすぎた。だから霧島さんにペナルティーを受け入れるように言われたときに、僕はこちらの利益を還元すべきだと考えたのだけれども、今思えば末恐ろしい。
僕の思考の端々にさえ、その因習の影がちらりとその姿を見せていることに僕は恐れる。

そして因習に囚われたせいで自分が守りたいものさえも守れないということが、どれほどのことなのか。
あの時、史を守れなかった僕は恐れる。
何時か、自分もまた父の唾棄すべき行いの二の舞を演じるのではないかと。
「それだけは…絶対に嫌だ。」


腰を上げ、屋上をゆっくりと見回すとグラウンドには無邪気で年相応に振る舞っている男女があちらこちらに見受けられた。
手すりにもたれながら、僕はグラウンドの手前の方をぼんやりと眺めると、向こうの方では代表や吉井、島田さんまで混じってサッカーをして遊んでいるのが見える。
体の弱い姫路さんが審判役をつとめているのだろうか。
先ほど鳴らされていた音は彼女の手に持つ電子ホイッスルのものだったのだろう、見ればなかなかの激戦が繰り広げられている。
Fクラスの大半が運動神経が無駄に高いのが可能にしているのは言うまでもなく、代表殿と秀吉君の二人の作戦を元にしているからか、どちらもがっちり組み合っている。
あっ、ボールをキープしている吉井が島田さんに跳ねられ奪われた。
島田さんはボールをすぐさまパスで須川に回し、彼のドリブルから代表殿のもとにボールが回され、代表のシュートにつながる。
キーパーをしていた秀吉君が何とかそれを受け止め、相変わらず回復能力の高いいつの間にか復活していた吉井の元にボールを投げる。
胸トラップで受け止め、ボールをすぐさま相手ゴールへと蹴り始める彼を後ろから島田さんが追いかける。
フェイントをかけて彼女の追撃を振り切り、クロスをあげていた福原にパスを回す。
ノーマークだった福原がシュートを決めるもキーパーのムッツリーニがたや
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