第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
26.Jury:『Necromancer』V
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を察して、嚆矢はほくそ笑む。そう、それで良い。勝つ意味など、この戦いにはない。だから────例えそれが、無限に零に等しかろうと。
零でなければ、嚆矢の『確率使い』は可能とする。
「じゃぁ、また。甦生して来やがれ!」
「ふあっ、ええ〜〜っ!?」
故に、涙子を抱き寄せながら壁をすり抜けてその虎口を凌ぐ。
耐震耐火の強固なビルの外壁、それを瞬時に破壊する術は二体の歩く死体にはない。溶鉱も火炎も、念動も精神破壊も。何の意味もない。
残された二体は恨めしげに壁を叩きながら、腐った吐息を夜闇に吐き続けるだけだった。
「あら、あら……ふふ、大したものだこと」
その空間に、涌き出るように女が現れた。波の紋様を刺繍された青いチャイナドレスを纏った……黒い扇で口許を覆う、妖艶な女だった。
そんな、たった一人の女に────歩く死体達は目に見えて恐怖し、逃げるように走り去っていった。
「孫子曰く、『三十六計逃げるに如かず』……間違いの無い判断です、陛下?」
クスクスと嘲笑いながら、嚆矢の消えた壁を撫でる。まるで、愛でも囁くかのように。
潮の香気を漂わせる女は、熱の籠る声を、口の有る場所ではないところから響かせた…………。
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