後日談の幕開け
一 アリス
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は。これ以上、こいつを。彼女達の元へ近付けるわけにはいかないのだと。ここで動きを止め。倒さねばならないのだと。そして、その、使命感と共に。
私の体の中。何か、何かが蠢く感覚。微かな不快感。そして、それ以上に湧き上がる……目の前のこの、肉を刻み。刻み、噛み砕き。この身、糧に――
何を。何を、考えているのか、と。燃え上がるように、熱に浮かされるように、現実感を失った頭、思考が。冷たい部屋へと引き戻される。私の体の中で蠢く何か。私の心の中で蠢く、知らない衝動。私は一体、どうなってしまったのか、と。
自身に対する疑心を。振り払おうにも、振り払えず。そのまま。壊さねば、壊される、と。腕を。また、振り上げ――
「退けオートマトン!」
ソロリティの声。聞こえるや否や、目の前の巨体。蹴り、背後へ跳び。
跳んだ、私の。一瞬前まで居た場所を。怪物の黒く歪な腕が薙ぎ払い。その、勢いと共に。
奴が。彼女達の方へと駆ける。無数の足、足音とは思えないほどに奇妙な音を響かせて。静止することさえ出来ないそれを追って駆け出すも、止める事さえ出来ず。ソロリティの放った弾丸、受けても、尚。
怪物は。至る所から粘菌を撒き散らし、床に広がる小さなそれらを踏み潰しながら。止めようと伸ばした腕は、只、宙を切るだけで。
異形の怪物の振り上げる巨大な刃……刃と呼べるのかも分からない。幾つもの刃物、器具、鈍器、ガラクタ。一纏めにして一振りの、それを。
ソロリティへ。変わらぬ笑みを浮かべながら――
刹那。強烈な光。点滅する赤を塗り潰すほどに強い、緑色の光。共に。
怪物の頭。怪物の体。手術台、アーム。渦を巻いた輝き、緑色をした光の玉。撃ち潰し、削り取り、肉は爆ぜ。光の玉が当たった箇所だけではない。異形の体は見えない何かに捻り潰されるように、捻じ切られるように。その原型を失っていって。
光源は。緑の光の中心に、居るのは。
「……アリ、ス……?」
私達の知る少女。小さな体、空中に浮遊し。緑色の輝きを放ち、回り、群がり始めた小さな怪物達までもが浮遊し、捩れ、潰されて。
「いや……いや、いや……」
漏れ出す言葉。流れ落ちる涙と共に光は溢れ。怪物達を拒絶するように突き出した腕。私の理解を超える、超常の力。
「いや、だよ、いや……傷つけないで……一人にしないで……怖い、怖いよ……」
ソロリティの体は。彼女の放つ緑色の光に包まれ。まるで、巨大な何かが守るように、抱き寄せるように。目の前、空中で爆ぜる、弾け跳ぶ、肉片、機械の欠片、刃物から守り。アリスの放つ光、力、止め処無く溢れ出すそれは。止まることを忘れたそれは。
破壊の力は。狂気に満ちた構造、異形の怪物、その、体を。
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