後日談の幕開け
一 アリス
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抜けるような。いやな音を立てて、這い寄る。その姿を見て、私達の前に立つ。ソロリティもまた、後退り。
彼女が扉を開き。彼女が始めに目撃した。今にも、アリスと同じように。崩れ落ちてしまいそうなほど。彼女は、震え。よろめいて。
アリスは。動けそうに無い。気を失ってしまってもおかしくないほど。ソロリティも、アリスほどではないにせよ。この怪物を前にしても、銃を抜く事さえ忘れ。只、それから目を離せずに。
「……ソロリティ、下がって」
彼女の前へと進み出る。彼女達を背後に。その怪物へと向き直る。
私が、動かなければ。
狂気に満ち満ちた造形。部屋は、予想より広く。左右に並んだ棚には、怪物に取り付けられた培養槽と同じ容器が立ち並び。赤い光に照らされるたびに、中に入った何かの影が浮かび上がる。
怖い。只、只、只管に。怖い。怖い。向かい合ったこの怪物が。得体の知れない物に溢れたこの部屋が。耳を劈く警報音が。赤い世界が、怖い、怖い、しかし。
無理やりに。自我を殺す。感情を殺す。引きずり込まんと纏わり付いた、狂気の腕を振り払う。私がここで動かなければ。背後の二人、共々。何をされるか、分からない。
「……やられる前に」
やるしかない、と。部屋へと踏み込む。怪物へと、近付く。近付けば。
細いアームの先、人間の手に握られた。小さな銀色、細く、薄い……刃物が。
後ろには彼女達が居る。避けることは出来ない。投げ付けようと構える腕、私が受け止めるしか――
無い、と。身構えれば。その銀色が空を切るより、早く。一発の銃声。背後で聞こえた。その銃弾は、私の傍らをすり抜けて。
小さな刃物を腕ごと撃ちぬき、弾き飛ばして。
「……っ、はー……は、ぁ……」
振り向けば、息は荒く。顔は蒼白、腰は引け。それでも。
銃を握る。ソロリティの姿があって。
「……ありがとう」
「……どう、いたしまして」
真っ青になりながらも。小さく笑ってみせる彼女。共に目覚めた味方が彼女で良かったと。それは、アリスも同じ。彼女は見たところ、武装を持たず。体に目立った改造も受けていない。戦う力を与えられなかったのかもしれない彼女を、ソロリティと共に守り。自分達を守り。この狂気から逃れよう。
「援護をお願い。あと、アリスを守ってあげて」
「言われなくても。あなたは、自分の身を守ることに専念して」
言葉に頷きで返し。その怪物が此方へと、彼女達へと近付く前に。異形の元へ。手術室の奥へと飛ぶ。
近くで見れば。まじまじと、細部まで見れば。更に、私の正気を削る。絡み合う肉に埋まるように様々な器具や機器が突き出し。声を上げることも無く笑みを作る顔は、まるで肉と皮で出来た仮面のよう。そして。
顔は。頭は、一つではな
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