後日談の幕開け
一 アリス
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至に笑顔を作る彼女を守り通したいと。
前を見据える。上の階へと続く階段は、既に見つけ。けれど、まだ、調べていない部屋がある。廊下の突き当たり、最後の部屋。最後の扉。その真上、書かれた文字は。
「……手術室。やっぱり、病院みたいね」
そう、呟いて。彼女は両開きの扉、冷たい扉に手を掛けて。
「……開かない」
「……これじゃないかな」
アリスが見詰める先にあるのは、扉の真横に取り付けられた端末。一つの溝の刻まれた……カードキーを読み取る装置、だろうか。
「鍵、ね。どこかに落ちていると、思う?」
「……この階には、ないと思う」
「そうよね。じゃあ、開けてもいいかしら」
ソロリティの言葉に、首を傾げるアリス。鍵は無く。開いてくれないのであれば、開ければ良いと。彼女も、大分苛立っていたらしい。
「私は、構わない。アリス、少し下がった方がいい」
「そう。なら、遠慮なく」
扉、取っ手、その窪みに手を掛けなおし。立てた指、両の手で引き裂くように。それだけで既に、軋み出す扉。その様は、その見た目、少女らしくない……込められた力もまた。人間離れした腕力を以て、彼女は。
一思いに。両腕を、開いて。
「っ!?」
左右へ弾け飛ぶ扉。端末から鳴り出す警報音。室内に備えられた赤ランプの点滅。音も色も無い世界から、一転。一定の間を置き赤く照らし出された室内と、喧しく鳴り響く警報。置かれた状況の変化に驚き、しかし、それ以上に。
彼女が開いた手術室、その奥。赤く赤く光を受けて佇む。暗く暗く闇の中で凍りついた笑みを向ける。その姿を、見て。
「い……」
アリスの体が崩れ落ちる。上げようとした悲鳴は、続くことも無く。只々、埃塗れの床へとへたり込み、震え、奥歯を鳴らす姿を、視界の端へと置いたまま。私自身。そこに居たそれの姿を見て。動くことさえ。視線を外すことさえ、出来ずに。
それは。それは、何か。人間の頭、少女の頭。作り物のような笑みを貼り付けた頭……頭しか、無い。首から下は、異形、歪み、形容し難い……只、それは。生物の持つ体ではない。絡み合った肉から突き出した手術台を備え、幾つもの細い金属の腕、先に器具を、人の手を備えたアームが伸び。無数の、何かが沈む培養槽を抱えた……
怪物。機械なのか、生物なのかも分からない。所々は確かに無機物で。所々は確かに有機物。これが生物だと言うのならば、冒涜。そして、それは、明らかに誰か、人間の手により作り出された……あまりにも悍ましい。対峙するだけで、精神を抉られる。何かが、居て。
「ひっ……」
怪物が、足と呼べるのかも分からない。黒い何かで、一歩、這う。ゆっくりと、しかし、確実に。踏み出す足は地面に張り付き、柔らかな何かが潰れるような、空気の
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