後日談の幕開け
一 アリス
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知れない製作者によって付けられた名前よりも、余程親しみが湧くだろう、と。そして、少しでも。私達三人が打ち解ける切欠になってくれるだろうと。
「なら、私のも頼みたい。オートマトン、は、呼び難いだろうから」
彼女もまた。アリスに頼み。対するアリスは、困ったような顔。けれども、決して。嫌ではなさそうに。
「……うん。任せてっ!」
涙を拭い。無垢な笑顔で、そう、返した。
◇◇◇◇◇◇
ソロリティとアリスと共に、薄暗い通路を歩く。彼女達は、手を繋ぎ。まるで、姉妹のよう。
私は。この手、この爪。手を握ろうものならば、望まなくとも血を見る羽目になるだろうから。私は彼女らの先に立ち、警戒しつつ足を進める。
此処は。何の建物だったのか。元々は白い壁……今は、汚れに汚れた。天井には時折、切れかけの電灯。明かりが灯っているならば、誰か、人が居るのかも知れない。私達を作った人物も、恐らく。しかし。
時折、左右に並ぶ扉の奥も、何処かへ運び出されたように空っぽで。人の気配、生物の気配一つ……それどころか、物さえ。何か、手掛かりでもあればとあの、寝台の部屋から出てきたと言うのに。それらしきものは見付からず。
「何処も彼処も白色ばっかり……病院か、何かだったのかしら。どの部屋にも窓が無いけれど……」
ソロリティが呟く。アリスは、彼女の手から離れぬようにと両手で彼女の左手を握り。三人分の足音が……彼女の言うには、嘗ての病院。その、廊下に響き続ける。
「……地下なのかもしれない」
彼女の言葉に、言葉を返し。また、先を。廊下の続く先を見る。然程、広いわけでもなく。幾らか歩けば突き当たりへと辿り着くだろう。一つ、一つと部屋の中を確認し。鉤爪しか持たない私に代わって、ソロリティが扉を開き。また、伽藍堂。彼女の小さな溜息を聞き、中を確認するまでも無く結果を知る。
本当に。何もない。生活感の無い建物、至る所に積もった埃。私達が付けたもの以外には、足跡の一つみ見当たらない。
「……私達を作った人は。何を考えていたのかしら」
ソロリティの顔は、空になった部屋を見るたび、曇り、曇り。それは、私も同じこと。他でもない自分自身の過去、素性。何一つとして知れないことが心地悪く。どうにもならないと分かっていながらも、苛立ち。
「だ、大丈夫だよ。まだ探し始めたばかりだし、元気出して」
そんな、私達を見て必至に励まそうとするアリス。先程までは寝台の上で震えていた彼女に励まされ、自然、笑みが浮かび。彼女も、恐怖と戦いながら私達に着いて来た。連れてきた私たちが、落ち込んでいては示しが付かない。
こんなにも小さな彼女。彼女もまた、一度死に。こんな、何処までも気味の悪い状況に置かれ。それでも必
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