後日談の幕開け
一 アリス
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動くのを待っていてくれて。
あとは。彼女は、どうするか。
「……話は、聞いていてくれたかな。私達は此処から出て、手掛かりを探したい。一緒に、来てくれないかな」
震える彼女の体に、手を置く。彼女の体はまた、少しだけ跳ねて。けれども。
拒絶はせずに。恐る恐る、毛布の下から覗く、顔。それは。幼い、少女のそれ。彼女もまた、何処かで……はっきりと思い出せず……見覚えのある、青い瞳は涙を湛えて。私を見詰めた。
「……ほら、そんなに、怖くは無いでしょう? 一緒に来てくれないかな。放って行きたくは無いんだ」
本の少しでも心を開いてもらえるようにと、笑みを作って手を伸ばす。
「……なま、え」
「え?」
伸ばした私の手と、彼女の手。微かに触れ。触れながら、開いた口。
「名前は、なんて言うの?」
寝台から起き上がり。私の手を掴んで。
彼女は、問う。その声は少し掠れながらも、はっきりとした。私が手を伸ばしたように、彼女もまた。此方へと歩み寄ってくれようとしているのだと。意図を汲み。汲み取っても。
私は。答えに、窮して。
「……私の名前……」
黒髪の彼女の呟き。彼女も、また。彼女も私と同じであるならば。思い浮かぶ名前はありながらも……与えられた名前はありながらも。それが、人間に付ける名前と言えるのかどうか、と。悩んでいるのだろう。
「ソロリティ。名前、と言えるのか分からないけれど」
寧ろ。今、この三人が集まった状況に対する揶揄か何かじゃないだろうか、と。思いこそすれど、私の記憶に植え付けられた。自分の名前は、この言葉で。
「……あなたはまだいい。私は、オートマトン。人形、だそう」
人につける名前ではない。私達に名前を与えたその人物は、相当。人をからかうのが好きらしい。
この有り様では、私に名前を尋ねた彼女も。奇妙な名前を与えられていそう。
「あなたの名前は?」
「私は、アリス。二人とも、不思議な名前だね」
私の予想に反して。彼女の名前は、少女らしい……らしすぎる程に。この名前にも、何らかの。皮肉が込められているのだとしたら。なんて。
半ば、自分の名前に対する八つ当たり。嫌な考えを振り払う。
「そう。アリス、と、オートマトンね……アリスは良いとして。あなたと私は少し呼びにくいかしら」
名前。もし、本当に。私達に与えたこの名前が、皮肉で。そして、今。私達がこうやって迷う様を見て楽しむ誰かがいるのならば。
与えられた名前もまた。少し、不快にも感じて。
「良かったら、呼び名だけでも考えてくれないかな。呼びやすい名前であれば構わないから」
目の前の少女、アリスに。名付けを託す。行動を共にする彼女に貰った名前の方が、誰とも
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