後日談の幕開け
一 アリス
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どうしたものか、と、対面の彼女へと視線を送るも、彼女も。私と同じく、困った様子で。声を掛けた手前、私が宥めるしかないか。
「大丈夫、落ち着いて。私達も、あなたと同じだと思うから。敵意はないよ」
女の子に対して、敵意は無い、は、ないかと。思えども、他に言い回しも思い付かず。
「私たちも、どうするべきか分からないんだ。出来れば出てきて欲しいけれど……無理そうなら、私達の話だけでも聞いていて欲しい」
返事は無く。私の言葉を聞いてくれたと、そう信じて。対面、腰掛けたままの彼女へと向き直る。
「私達は、アンデッドにされたのだと思う。技能の移植も行われてるし、体も改造されてるから多分、戦闘用の」
兵器としてのアンデッド。特に彼女は、人為的に引き起こした変異、肉体の改造が多く見られ。私もまた、左耳にはインカムのような装置。用途と使い方も、私の頭には書き加えられており。強靭な肉体、改造を受け、人類に取って代わり戦う事を義務付けられた死人。しかし。
「でも。そうだとしても、今のこの状況が理解出来ない。戦闘用のアンデッドがこんな場所で起動するのもそうだし、それよりもまず」
「……どうして、人格があるのか?」
そう。本来、戦闘用のアンデッドに……兵器に。自我なんてものは必要なく。自分で考えることなど無く、与えられた命令に従えばそれで良い筈。なのに。私たちには確かに、自分自身で物事を考えることが出来るだけの自我……心が植え付けられていて。
戦闘用ではないのなら。生きていた頃の私たちが、自分の意志でアンデッド化処理を施したのであれば。記憶が無いのはあまりにも不自然で。何れにせよ、今私たちの置かれているこの状況が理解できない。
「あなたも、アンデッドについて知ってるみたいね」
「私は、本の少しだけ。あなたほどじゃ、ない」
自我を与えられて。暗い部屋で目覚め。何の為に作られたのかも知れない。只。
このまま、この部屋に居続けても。進展は無いように思える。
「私は。この部屋を出て……生きていた頃の私について調べたい。あなたは……」
いや。毛布の中。先よりは幾分、震えも収まった彼女もまた。同じ境遇。此処に一人残して行くのも、気掛かりで。
「あなた達は、どうする? 私は、出来ればあなた達と一緒に行きたいけれど……」
何か、意味があって作られ。何か、意味があって。此処で、三人揃って目覚めたのだろう、と。その、意味も分からないまま。死んだ体で一人、彷徨う勇気なんて無く。寝台から降り、二本の足で……暗がりの中。よくよく見れば、その足も。獣のそれに置き換えられた、彼女としても同じ意見のようで。私と視線を交し。寝台から降りこそすれど、一人、扉の先へと進んでいってしまうようなことも無く。私が
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