第四十五話 帝国の実力者
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爵邸 フレーゲル内務尚書
「ようやく終わりましたな」
財務尚書ゲルラッハ子爵が感慨深げに言うとブラウンシュバイク大公、公の親子、リッテンハイム侯、リヒテンラーデ侯、ルンプ司法尚書、エーレンベルク元帥、シュタインホフ元帥、そして私の八人が頷いた。
「此度の事ではブラウンシュバイク公に大分御骨折り頂きました。感謝しております」
ゲルラッハ財務尚書が頭を下げるとブラウンシュバイク公が柔らかい笑みを浮かべた。
「お気になさらないで下さい、ゲルラッハ財務尚書こそ御疲れでしょう」
「畏れ入ります。しかし私などよりはるかに公の方がお疲れの筈、御自愛下さい」
ゲルラッハ財務尚書がブラウンシュバイク公を気遣うと公は“有難うございます”と言って微笑んだ。
ゲルラッハ財務尚書が公に感謝するのも無理は無い。膨大なまでに膨らんだ貴族専用の金融機関、特殊銀行、信用金庫からの貴族への融資、そしてその不正利用、そこにようやくメスが入り融資資金回収の目処が立った。ブラウンシュバイク公が法案を作成し財務省が法制化した。そして今日、それが黒真珠の間で発表された。政府の財政再建にも大きな意味を持つ筈だ。
「領地を失う貴族達ですが以外に大人しかったですな、もう少し反発が有るかと思ったのですが……」
ルンプが首を傾げるとリヒテンラーデ侯が微かに笑った。
「公が事前に根回しをしたからの。領地は無くなるが借金は無くなる、融資資金はそのまま貰える、おまけに内務省から派遣されている監督官から解放されるとな。連中、余程監督官が目障りだったらしい、意外にすんなりと受け入れたようだ。フレーゲル内務尚書、お手柄じゃの」
応接室に笑い声が満ちた。私も苦笑せざるを得ない。
「彼ら自身分かっているのですよ、領地経営はこれから難しくなると。お金もかかりますが領民達の不満を理解しそれを解消する方向で統治しなければならない。結構面倒です。それよりは気儘に金儲け出来る立場の方が楽だ、そう思ったのでしょう」
公の言葉にまた笑い声が上がった。
「無責任な奴、と非難したいところですが彼らのおかげで他の貴族達も大人しく受け入れてくれました。領地を失う連中が受け入れたのですからね、領地を持つ事が許された連中は文句を言えません」
上機嫌なゲルラッハ財務尚書の言葉に皆が頷いた。厄介事が片付いた所為だろう、皆も表情が明るい。
「無責任というのも悪くは無いようですな」
「ごく希にだがそういう事も有るらしい、いつもでは困るが」
シュタインホフ統帥本部総長とエーレンベルク軍務尚書の遣り取りに彼方此方で噴き出す音が聞こえた。耐えきれないように大公が笑い出す、皆がそれに続いた。
一頻り笑った後、リヒテンラーデ侯が口を開いた。
「この後は平民達への説明だが……」
「一難去っ
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