【達幹】二人だけの土曜日【R-18】
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二人は暫しの間、無言で歩みを進めた。
その沈黙は不思議と気まずさを感じさせず、むしろ心地が良かった。
人の行き来が多いショッピングモール近辺ということもあり、手を繋ぐ等のことはとてもできないが、並んで歩いているだけで二人の時間を過ごせている実感があった。
「幹比古、ここだ」
ある店の前で、達也が沈黙を破った。
達也の示した店を見て、幹比古は首をかしげる。
「看板がないね、見たところ和物雑貨店のように見えるけどそれにしてはなんというか……雑多な」
「まぁ雑多という言葉がよくあう店だ。和物に限らずマニアックな品がジャンルを問わずに、と言うよりジャンルを無視して気紛れに揃えられている。
この前武装一体型CADの掘り出し物を見つけてな、幹比古に見せたかったんだ」
鉄扇は使えるか、と達也に問われて幹比古は驚きも顕に目を見開いた。
「使えるも何も、鉄扇のCADは呪符の次に得意だよ。最近じゃもう自作するしかなくて、元になる鉄扇自体が作り手不足でとにかくなかなか入手できないんだ」
「まさかあるの……?」
「ああ、多分気に入ると思う」
幹比古の瞳が期待で『パッ』という擬音があいそうなほどに輝くのを見て、CADに目がない小柄な某上級生の姿が達也の中でダブった。
少し笑ってしまいそうになった達也だがなんとかそれを噛み殺し、幹比古を店の中へいざなった。
「本当にニッチな物が沢山あるなぁ、あっちには手漉きの和紙が……っと、目移りしたらいけないね」
「時間は沢山あるから自由に見てくれて構わない、CAD以外にも幹比古の気に入りそうな物が多いから連れてきたんだしな」
達也の言葉を聞いた幹比古がとんでもないとばかりにぶんぶん首を振った。
「そんなわけにはいかないよ、折角達也が見つけてくれたんだから、そのCADから見たい」
今日は幹比古がいつになく積極的に、力んで前のめりになっている。
どちらかというと内向的な幹比古が自分を出してくれていることを、達也はなんとなく嬉しく感じていた。
しかも先程から幹比古の周囲に前時代の漫画のようなキラキラとしたエフェクトが見えているような気がして、達也は自分の目におかしなフィルターがかかったかもしれないと思い始めていた。
我ながらどうかしていると思いながら、達也は幹比古を店の奥に誘導し、無造作に置かれていた黒い棒状の、閉じられた鉄扇型のCADを幹比古に示した。
「これなんだが、どう思う? 」
幹比古が息を飲む気配がした。
果たして咄嗟に言葉の出ない理由が、目の前の品が珍品故か、それとも全く役に立たないガラクタ故か。
達也はあまり古式魔法関連のCADの良し悪しについて知識がないので、一体どちらなのか分からない。
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