【達幹】二人だけの土曜日【R-18】
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で、台詞の威力が倍増する。
実際、幹比古はトドメを刺されてよろめきそうになっていた。
しかし、寸での所で踏みとどまる。
(「負けっぱなしは嫌だ」)
「達也だって、格好いいよ! 今日の服だって似合ってる」
「そうか? 俺の容姿は普通だと思うが」
ここから幹比古の怒涛(注:彼にしては)の反撃が始まる。
今から言おうと考えている自分の台詞に赤くなりながらも、必死に達也の美点を訴えかける。
「達也はいつも隣に司波さんがいるから麻痺しちゃってるんじゃないかな……派手さはないかもしれないけど普通に格好いいよ、見た目だけじゃなくて振る舞いもね、例えば一一」
「切れ長で涼しげな目元とか」
「引き締まって無駄のない体つきとか、健康的な肌の色とか、今日の服装でそれが凄く引き立てられてる」
「どんな時も、誰が相手でも、いつも目線が真っ直ぐで揺らがない所とか」
「冷たいようで実はちゃんと温かい所とかね
……たまに笑った時なんて、それがすごく分かるよ。内面の温かみが滲み出てると思う」
「からかわれるのはちょっと困るけど、悪巧みしてる時の顔もいいなとか思ってるし、それに一一」
「幹比古、もういい、分かった」
「あ、ごめん……嫌だった?」
「嫌ではないが、どうもこそばゆい」
(「こそばゆい? それって……」)
達也でも照れることがあるのだろうかと、幹比古は達也の顔を見詰める。
はっきりとした変化は読み取れない、しかし、微かにではあるが確かに、達也の頬が紅潮していた。
決まり悪げに目線をそらされて、疑念は確信に変わった。
達也は確かに照れている。
達也の心が、感情が、今少しでも動かされたのだろうか。
そして、それは自分の言葉や行動によってなのだろうかと、幹比古は考える。
もしそうなのだとしたら、それはどんな言葉にも置き換えられないほどに、表現できないほどに、嬉しいことだと感じた。
人の言葉や行動に動かされることがあるのなら、そのひとつひとつが達也の心や感情の存在を証明する根拠になる。
そう考えて、幹比古は胸がいっぱいになった。
そして再び達也と目が合い、はにかんで笑う。
それを見た達也は、柔らかな日差しを受けてつぼみが綻ぶ光景を連想し、幹比古の笑顔を眩しいと感じた。
達也には何が幹比古を笑顔にしたのか、はっきりとは分からない。
ただ漠然と、幹比古が自分を思ってのことだということだけ、分かっていた。
誰かに思われることを幸せに思うのは、深雪以外では初めてかもしれない。
胸に微かに湧いた温かさを、今目の前にある笑顔を、大切にしたい、なくしたくないと、達也は切に願った。
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