【達幹】二人だけの土曜日【R-18】
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古は走って達也のもとへ向かった。
一方の達也は、幹比古が改札の向こう側からなかなか出てこないことに気付いていた。
大方心の準備に時間がかかっているのだろうと考えて、急かさずにじっと幹比古を待っていた。
しかし達也の予想より早く、しかも慌てて幹比古が駆け寄って来るのを見て、何事かと達也は首を捻る。
「ごめん達也、待たせちゃったね」
「まだ約束の時間前だ、気にしなくていい。それよりどうかしたか?」
「え!? どうもしないよ!」
そう言って幹比古が浮かべた笑顔は引きつっていて、「どうもしない」という風には見えなかった。
しかし詮索しても仕方ないだろうと、達也はそれ以上幹比古の様子がおかしいことには触れず、少し歩こうと促した。
幹比古は「達也が女性にナンパされる所を見たくないから阻止しに来た」とはとても言えないと考えていたので、心中でほっと胸を撫で下ろして達也の後に続いた。
「幹比古、今日は洋服なんだな」
(「今日は?」)
「いつも洋服だよ……?」
達也の妙な問いの意図が掴めず幹比古が戸惑っていると、達也が大真面目な顔で言った。
「今時筆と紙でメモをとるくらいだからな、てっきり今日は和装で来ると思っていたんだが」
「そんなわけないだろ! ちょっと僕の趣味が古風なのは認めるけど、そこまで時代錯誤じゃないよ……もう」
からかわないでよね、と幹比古がやや拗ねたような口調で言うと、達也の口許が微かに綻んだ。
「ばれたか」
「最近隙あらばからかおうとしてくるんだからそりゃ分かるよ。
真面目な顔して言うから油断も隙もないよね、変な嘘つかれても一瞬信じそうになるし。なんでからかうの?」
「表情がコロコロ変わって見ていて飽きないからな、特に照れた顔が好きで見たくなるから、ついちょっかいをかけたくなる」
「……今もからかってる?」
「いや、何かおかしなことを言ったか?」
「自覚がないんだ……」
幹比古はいかにも「頭が痛い」といったていで額に手を当てて顔をそらした。
呆れた、というジェスチャーだが、横顔が赤いので照れているのが容易に分かった。
もっとも、変なところで朴念仁な達也は、幹比古が何故照れているのかについては全く分かっていなかった。
「からかったのは悪かったがそれは別として、幹比古の私服を見るのは今日が初めてだな」
「そ、そうだね、今まで制服でしか会ったことがないからね」
「こうして見るといいものだな」
「え?」
「今日の服装は幹比古の繊細な雰囲気に合っている」
似合っているぞ、と達也が仄かに笑った。
(「そこで笑うとか反則……!」)
深雪以外に向けられる達也の笑顔はレアなの
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