第二章 彼と彼女の事情
第十七話 奇襲的外交
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に勝ちたいのなら、それぐらいのハンデは必要。」
「霧島さん、そうは言っても譲歩しすぎだよ。」
そう言ったのは三人目のAクラス要人。
確か彼こそが学年次席で男子の中では主席の久保利光、であったはずだ。
「久保の言う通りよ、代表。……そちらから譲歩の余地は無いのかしら。」
「無いな。」
「少々お待ちください。」
そういって代表の袖をちょいちょいと引っ張る。
勝った場合と負けた場合の双方で検討すべきであり、最低最悪の事態を常に考え、それに対して十分な備えをするものだ。
対Aクラス戦と言っても見えていない戦力、勢力を考慮に入れるのは当然だ。まして、僕らが意図的に無視しているクラスの動向次第では教室の机が段ボールになるだなんて最悪だ。
「代表、対E工作はムッツリーニ君の協力のお陰で順調に進んでいますよね?」
「あぁ、それがどうかしたのか?」
「Aが追撃してこなければ、という仮定付きです。さらにそもそもこの対戦を正式な対戦にしないという条件であれば……」
「つまり、賭をして遊んだという形にでもすると言いたいのか?」
「はい、残念ながら同盟込みでの勝算も良くて6割なのですから……」
「そうだな……、それができるなら譲歩しても良いだろ。」
「交渉はどのように?」
「そうだな……F連中には聞かせられない内容が入るからこのままお前が進めてくれ。その方がああだこうだ言われなくて済むからな。」
「承知しました。」
Aクラスの方々の方を見ると、木下さんは相変わらず苛立たしげに、久保君は心配げな顔つきで、霧島さんはポーカーフェイスと言うよりも氷の仮面のままこちらを待っていてくれた。
「私の責任で話し合いをしても良いとの事です。隣の空き教室でお話し致しませんか?」
「感謝するわ、代表もそれで良いよね?」
「………」
「代表?」
「………何でもない。」
とてつもなく静かな殺意を向けられたのは見逃しがたいことなのですが……一体僕が何をしたというのだろうか。
ただ代表殿と話しをしただけ……まさか?
我ながら安直すぎるとは思うし、正直島田さんに当てられているだけとも考えられる。
それでも、明確な殺意を向けられた身としてはそれぐらいしか思いつかない。
とはいえ彼女たちが発するその感情を僕は知らないし、理解もできないのだけれど。
「あぁ、それから代表。少しお耳を拝借しても宜しいでしょうか。」
ぴくんと霧島さんの方が跳ね上がったように見えた、もう一つぐらい証拠が欲しいところである。
「(ごにょごにょごにょごにょ)」
「任せる。」
「家で決めましたとおりに。」
その言葉に霧島さんの歩みが止まった。
「霧島さん?どうかしたかい?」
「………何でもない。」
何にかがあるからでしょうに……
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