下忍編
おぞましい
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がさがさと繁みをかき分ける音と、無造作に、けれど、静かに木々の隙間から体を覗かせたカトナは、そのまま気兼ねない動作で多由也の前へと姿を出した。多由也は先程まで隠れていたカトナがいきなり飛び出てきたことに驚きつつ、当たりに注意深く視線を飛ばす。
目の前にいきなり飛び出してきたのだ。罠か何かを仕掛けたかと疑うのは当然の事だろう。
「随分とまぁ、愚直に出てきやがったな、クソヤローが。もっと、ねずみみたいに、こそこそしてくるかと思ったぜ」
あからさまな挑発。だが、カトナは多由也を静かな目で見返すだけで、その挑発には乗ってこなかった。いつもの彼女らしいと言えば彼女らしい行動なのだが、そんな彼女を知る由もない多由也は、ちっ、と舌を打ちつつ、笛に口を当てた。
カトナが腰を低く構え、一気に走りだすが、間に合わない。
どう頑張ろうと、人間の速さが音速をこえることはできないのだから。
息が吹き込まれ、音が辺りに響く。
たった一音とはいえ、その音の中に込められたチャクラと技術は、他の追随を許さない。鳴らされた音は瞬く間の間に体を支配し、動きを止める…はずだった。
ならされた音を無視して、カトナはまっすぐに突っ込んだ。
「な!?」
止まる筈だった人間が止まらなかったことに驚いた多由也の体が、思わずその場で固まってしまい、カトナの大太刀が振りかぶられ、横に凪払われる。
がぁん! と言う凄まじい音と共に、多由也の体がふっとばされて、背後にあった木に強かにうちつけられる。だん、という音共に地面に倒れ込む。その衝撃で、息がつまった一瞬を見逃さず、カトナは一気に多由也に詰め寄ると、その腹部に掌底を打ち込んだ。
チャクラを纏わせた掌底は多由也の腹部に深く叩きこまれ、経絡系をあらし、激痛が体の中を流れた。が、多由也はその掌底の衝撃を逆に生かし、後ろに飛んで距離を稼ぐ。
ちっ、と舌を打ったカトナは、そのままの距離をあえて詰めようとはせず、くるくると持っていた刀を回して汚れを振り払う。僅かに砂埃が付いていた刀は、カトナの意のままに振るわれる。
それを見つつ、自分の腹部を押さえていた多由也は、必死にカトナがどうして動けたかについて考える。
対策を練られたのか? この短時間に? まさか。したとしても、出来るのは風遁くらいだ。それも結構な制度を必要とする。大蛇丸様曰く、チャクラコントロールは卓越しているようだが、この子供のチャクラ総量は少ない。今のこの子供に出来る筈はない。あの時は九尾のチャクラを使っていたのだ。だから仕えた。でも今は使っていない。だから、使える筈がない。
と、おもい。そこまで考えて。
多由也は最悪の可能性に思い至った。するはずのない、やるはずのないことを思い付いた。
「まさか、おまえ、鼓膜を破っ
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