≪アインクラッド篇≫
第一層 偏屈な強さ
≪イルファング・ザ・コボルドロード≫ その参
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そんな中、誰かの叫びが俺の心を躍らせた。
「全員――フルアタック!! 囲んでいい!!」
「お……オオオオオオ!!」
戦闘に参加していたプレイヤーが鬱憤と憤怒を爆発させるように雄叫びを上げた。倒れたイルファングを取り囲み、色とりどりの武器達がイルファングを攻撃する。その中に割り込み、俺もイルファングを斬りつける。
「ラストアタック、貰うぜ!」
「「……させるかよッ!!」」
キリトとギアが声をハモらせながら俺の野望を否定した。見れば二人とも喉もとで急所めがけてソードスキルを打ち続けている。そのせいで俺はクリティカルを出せず大した攻撃ができない。正直セコいぞお前ら。仕方ないので人気も人気もない、もっとも防御力の高いところにソードスキルを打ちこむ。
幾つもの独特な色のライトエフェクトとゲーム的な音が絶え間なく玉座に響き、キリトの片手剣がイルファングを貫き、ついにやっとイルファングをポリゴン片へと四散させた。
虚空を裂く、いくつかのソードスキルの音が鳴ったあと、静寂が訪れた。先程の軽口も何処へか、その場にいる全員が硬直し、勝利の歓声を上げる時なのかどうかをじっくりと探っている。≪ベータとの違い≫、という予測不能な現象を警戒するように誰もが鋭い視線で周囲に投げている。
俺は、警戒を絶えないインディゴの傍に寄って、優しく、柔らかく話しかける。
「終わったぜ、俺達の、勝利だよ」
同時、システムがそれを認識したかのように玉座の中央に巨大な祝福のメッセージ≪Congratulations!!≫が出現し俺達の勝利を保証した。それらを見たレイドの全員が表情を取り戻し、肺に深く空気を溜めたのち歓声を弾けさせた。
両手を突き上げ雄叫びを上げる者。仲間と抱き合う者。下手くそなダンスを披露する者。地面を転げまわる者。ひたすらに笑う者。嵐のような大騒ぎの中、俺の隣でインディゴが力が抜けたようにへたへたと座り込む。俺はインディゴに手を差し伸べる。
「お疲れ様」
息も絶え絶えなインディゴは大きく息を吐き、ほっとしたような表情で俺の手を掴み立ち上がる。勢い余って抱き合うような形になってしまったがインディゴは疲労のためか、さして気にするようもなく数秒だけ俺に体を預けた。体を埋めながら顔を上げ、俺と目を合わせ、唇を震わせる。
「私、私ね。実は――――」
インディゴの言葉が最後までいうことはなく、誰かの叫び声が弾けた。
「――――なんでだよ!!」
半ば裏返った、ほとんど泣き叫んでいるかのようなその響きに、広間の歓声が一瞬で静まり返る。声の主はこのレイドのサブリーダーにしてC隊のメンバー、リンド――ディアベルの仲間だった。
「――――なんで
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