≪アインクラッド篇≫
第一層 偏屈な強さ
≪イルファング・ザ・コボルドロード≫ その参
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繰り出された手を裏拳で弾くように左手で薙ぐ。余った運動エネルギーで前進し最後に手を返し腕を掴みグイっと引っ張る。距離は決定的にまで狭まり――ついに密着した。
「もらったぁぁああッ!!」
今にも倒れこみそうな態勢のイルファングの顎を左手で突き上げ、クイっと喉を露出させる。手慣れた技だ。イルファング、貴様はこの武器、≪ジャマダハル≫ビルドの神髄を味わうこととなる。
密着したコボルド王は憎悪に満ちた表情を俺に投げかけ――俺は勝ち誇るように大きく口角を上げた。トンっと左肩がイルファングの胸に当たった音を合図に、≪手甲剣≫のソードスキルを発動する。黒煙と火炎のようなエフェクトを巻き上げながら纏ったジャマダハルが、ズズズという石を擦るような不気味な音を奏でながら、宿敵の弱点である喉に吸い込まれていった。
確かな手ごたえの直後、ドン、というジャマダハルから発せられた、喉仏を腹の底まで落としたかのような爆音が、俺を襲う。大砲、もしくは花火を想起させるその爆音は大気を駆け、玉座を振動させた。
≪手甲剣スキル≫の中で最高の火力を誇るソードスキル≪罰≫、今放ったのは、その上位版≪暴食を罰せよ≫。パニッシュメントと同じ六倍クリティカルダメージに加えて敵最大HPに比例したTrueダメージ――防御力を無視したダメージを与えることが出来るソードスキル。
罰と違い硬直時間が発生するため、というよりもパニッシュメントで既にオバーキルなので、通常は使わないスキルなのだが≪フロアボス≫のようにHPが極端に高い相手だと、割合で敵のHPを奪うサブ効果が有力に働くはずだ。
さて――――――。
俺の硬直が解けたころ、写真のワンシーンのように固まっていたイルファングは大きく仰け反って天を仰ぎ、膝から崩れ落ちた。ギギギと苦しそうに嗚咽交じりの咆哮で弱弱しく威嚇し――最後の一段のHPが三割ごぞりと≪消失の赤色≫に染まった。
バックステップで距離を取り、左手を上げ手首を回す。それはチェンジ、≪スイッチ≫の合図。喉を震わしジェスチャーの意図を叫ぶ。
「スイッチッ!! 頼むッ!!」
「おうッ!!」
男達の野太い声の中、キリトの指示が飛ぶ。
「ボスを後ろまで囲むと全方位攻撃がくるぞ! 野太刀の軌道は俺が言うから、正面の奴が受けてくれ! 無理にソードスキルで相殺しなくても、盾や武器でキッチリ守れば大ダメージは喰らわない!」
数メートル先のイルファングの右手にはカタナ――野太刀が既に握られている。先程の交錯での右ストレートの際に咄嗟に拾い上げたのか。やはり、一筋縄では行かない。
戦線から一時離脱し、キリトのもとに避難する。ポットするほど
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