第百八十四話 木津川口の海戦その九
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「まことにおかしな船です」
「どうして攻めてくるのかさえも」
「全くわかりませぬ」
「あれでは」
「何かわからぬが」
それでもだとだ、村上はここでこう言った。
「どちらにしてもな」
「はい、あの船達も」
「沈めねばなりませんな」
「織田の船であることは間違いない」
どの船にも織田家の青い旗がある、家紋も織田家のものだ。その旗が何よりの証だった。織田家の船であることの。
「それならばな」
「それではですな」
「ここは」
「そうじゃ、炮烙の用意じゃ」
それで攻めるというのだ。
「よいな」
「ではこれまで通り」
「そうして沈めますか」
「燃えぬ船はない」
村上はこれまでの戦で戦ってきた船のことから言った。
「それならばな」
「はい、では」
「今より」
こう話してだ、そしてだった。
実際に炮烙を投げた、その巨大な船にも。
しかしだった、その巨大な船達に炮烙を幾つ投げてもだった。
鉄に跳ね返される、全く燃えはしない。そして。
織田家の船達はだった、彼等のその前で。
ゆっくりと動いていた、そのうえで。
船腹を見せてきた、村上はこのことにもいぶかしんで言った。
「腹を見せてきおったな」
「はい、ここで」
「急に」
「奴等何を考えておる」
全くわからないといった言葉だった。
「今も」
「それは」
「わかりませぬ」
「今度のこともです」
「どういうつもりでしょうか」
「腹はな」
船の腹、そこはだった。
「船の急所じゃ」
「そのまま突っ込んでもいいですし」
「まさにですな」
「そうじゃ、あえて急所を見せるとはな」
それが、というのだ。
「わからぬ」
「!?殿」
ここで家臣の一人が船を見て言った。
「あれを」
「むっ、あれは」
「はい、大筒です」
大砲、それであった。
「それがあります」
「そうじゃな、しかし」
村上もその大筒を見た、それは。
一つや二つではなかった、何とだ。
「幾つもあるぞ」
「大筒が」
「何じゃあの船は」
「大筒一つでもないというのに」
「一体幾つあるのじゃ」
その大筒が、というのだ。
「数えきれぬだけあるぞ」
「織田家はあれだけの大筒を持っているとは」
「信じられぬ」
村上は今呆然とさえしていた、それが言葉にも出ていた。
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