第百八十四話 木津川口の海戦その七
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「弾が来ても防ぐ」
「屈むのと共に」
「そうじゃ、ここはな」
そうしてだ、弾を防ぐなりかわせというのだ。
「よいな」
「はい、では」
「今は」
「そうじゃな、ではな」
盾も用意されてだ、屈んでだった。
波に揺れる中で撃つ鉄砲の弾を防ぐ、揺れる中で撃ったので陸で撃つより照準が悪い鉄砲の弾をさらにかわし防いだ、当たる者は殆どいなかった。
そしてだ、今度はだった。
彼等の反撃の時だった、そこで。
火打ち石で火を付けた炮烙を投げてだ、それでだった。
織田の舟を次々と燃やしていく、それと共に。
舟が次々と燃えて慌てふためく彼等にだ、次は。
刀を抜いて斬り込む、そして。
織田の水軍を倒していく、最早完全に村上水軍の思うままだった。
その戦局を見てだ、元春が会心の笑顔で言った。
「勝っておるな」
「まずは、ですな」
隆景は慎重な面持ちで次兄に応えた。
「緒戦の流れ掴んでおりますな」
「そうじゃな」
「しかしです」
「緒戦は緒戦か」
「はい、相手は織田信長」
隆景は信長を決して侮っていない、それで言うのだった。
「油断出来るものではありませぬ」
「ではこの度も」
「伏兵を置いているやも知れませぬし」
「それか」
「あと数もです」
このこともだ、隆景は懸念して言うのだった。
「やはり多いですから」
「だからじゃな」
「はい、それで」
「何時何処から出て来ても」
織田の水軍の大軍が、というのだ。
「何しろ伊勢志摩と瀬戸内の東の大軍がいるのですから」
「ううむ、では」
「やはり戦は数ですから」
このことは水軍の戦でも変わらない、隆景は今自分達が破っている織田水軍の大軍を見つつそうしてこうしたことを言うのだった。
「油断されるべきではありませぬ」
「最後の最後までか」
「左様かと」
「そうじゃな」
ここでだ、隆元も言ってきた。
「この度の戦はな」
「はい、やはり」
「織田信長は油断ならぬ者じゃ」
彼もこう言うのだった。
「緒戦では勝っておるがな」
「最後の最後まで勝ってこそです」
「ここで勝ってもじゃ」
それでもだというのだ。
「最後に負ければな」
「元も子もありませぬ」
「ここで若し大きく負けることになれば」
毛利水軍がだ、そうなればと言う隆元だった。
「その時は我等が危うくなる」
「毛利家が」
「まさしく」
「本願寺は降参してしまう」
隆元はこのことも言った。
「間違いなくな」
「そして織田家は」
「西に進んできますな」
「その大軍でな」
そうなるというのだ。
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