第二章
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第二章
「頑張ってみるわ」
「そうですよ」
彼は答える。
「だから両立を目指せばいいと思ります」
「そうね。じゃあ」
ここで顔を明るくさせてきた。
「実はまた声をかけられてるのよ」
「そうですか」
明はその言葉を聞いて一瞬顔を暗くさせて俯いた。しかしそれは一瞬のことなので紗江子は気付かなかった。気付かないところに彼女の問題があったがそれにも気付いていなかったのである。
「よかったですね」
「ええ。ちょっと隠していたのは御免なさい」
「いえ、いいですよ」
それは笑って受け止める。
「話しにくいこともあるでしょうし」
「秘密にするつもりはなかったけれどね。ただ」
「それで今度はどうなんですか?」
明はそれを尋ねてきた。照れ臭そうな彼女が話し易くする為の配慮でもあった。
「優しい人ですか?それとも」
「どうかしら。結構きつい人みたい」
目線を上にあげて考える顔で答える。顔は正面を向いていた。
「きついんですか」
「何となくだけれどね。どうかしら」
「とりあえず何回かお話されればいいですよ」
明はそう彼女にアドバイスをした。
「それから考えて」
「何かそれだとまだるっこしいわ」
しかし彼女はそれには首を傾げさせる。何処か少し焦っている感じもあった。
「何かね」
「はあ」
「私だってもう二十八よ」
自分の歳を話に出してきた。
「もういい歳だし。焦りもするわよ」
「結婚ですか」
「ええ。彼氏が欲しいのは事実よ。けれどそれは」
今度は烏賊を食べた。その後でまた一口飲む。よく見ればかなり飲み食いしている。
「結婚を前提としてなのよ」
「それだと余計に焦っては駄目なんじゃ?」
「それもわかってるわよ」
紗江子も馬鹿ではない。そうしたことを全てわかっているのだ。わかっているがそれでも自分で自分をどうにかできないことがあるのだ。それが今であった。
「けれどね」
困った顔で述べる。
「ついつい焦ってしまうのよ」
「そうなんですか」
「そういうこと。焦って余計に駄目になりかねないのもわかっているけれど」
「けれど先輩」
明はまた彼に声をかけてきた。
「焦る必要はないですよ」
「そう言うけれどね、あんた」
しかし紗江子はそれでも言う。目が少し座ってきて危ない感じになってきていた。
「女の二十八って微妙なのよ。だから」
「わかってますよ。けれど時には周りを見ることもね」
「周りを」
その言葉を聞いて少し心が静まった。そのうえでまた話を聞くのだった。
「そうですよ。時には立ち止まってね。子供達にもよく言いますけれど」
「子供達にもね」
熱心な教師でもある紗江子には響く言葉だった。その言葉を聞いてさらに冷静になり明の話をより真剣に聞くのであった
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