第6話 回転木馬ノ永イ夢想(前編)
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備員が巡回に。何故?
「あまり、外出しないでください。他にも特殊警備員が来るかもしれませんが……危険ですから」
「はい?」
「それじゃ」
ペダルに足を乗せ、漕ぎ出そうとする。
「待って」
あさがおは呼び止めた。
「私、外出はしないけど、ここに食糧の供給は来ないんですか?」
特殊警備員は真顔で、不気味なほどあさがおを見つめた。
「よそには来ている場所もあるみたいだけど、ここには来ないから。何か知りませんか?」
「その内来るでしょう」
と、何の根拠もなさそうな返事をし、
「明日もまた来ます」
一礼した。あさがおは見送った。
クグチはある程度離れてから眼鏡を外し、来た道を振り返った。
どの家も無惨に崩壊した、廃墟と化した区画だった。
死者たちが町を作っている。実在しない人間たちの、実在しない家々が、肉眼で見える人間たちの廃墟に重なって存在する。
事態に対処するために、よその居住区から警察隊が道東に派遣されてきた。彼らには死者を、すなわち廃電磁体たち取り締まることはできない。生き残った人々の保護と、廃電磁体たちからの隔離を目的として来ている。
廃電磁体を消去できるのは特殊警備員たちだけだ。その特殊警備員たちにしても、指示する上司も行動指針も失い、班ごとにてんでばらばら、勝手な行動をとっているのが現状だ。
十三班の待機室に戻ると、今日も警備員たちが意味もなく集まっていた。
とにかく命令がない内は何もするなと、無駄に待機室に詰めているだけの班がある一方で、岸本は班員たちにUC銃を所持しての自由行動を許し、避難場所に近付く廃電磁体を撃つことを許可していた。その代わり日に一度は待機室に顔を出し、日報を提出しなければならない。
「今日も星薗は来ないのか」
岸本が舌打ちし、デスクで日報を書いている島を睨んだ。島はびくりと震え、日報に集中している演技で決して岸本を見ない。
「おい島」
「……はい。何でしょうか」
「昨日、星薗にここに来いって伝えるように言ったよな。どうなったんだ」
「行ったんですが、留守でした」
「何で留守だとわかったんだ」
「呼んでも返事がなかったんです」
「居留守に決まってるだろうがそんなもん。部屋開けてみたのか」
「でも……鍵が……」
島はペンを持つ手を震わせながら、消え入りそうな声で「すみません」、岸本が当てつけのような溜め息をついた。
だったらあなたが行けばいいじゃないですか、とクグチは思う。けれど言わない。怖いわけではない。面倒だからだ。今の自分に、岸本の他罰的な性格と攻撃性に平常心でつきあいきれる自信がない。
「わざわざ星薗さんをここに来させる理由があるんですかねぇ。こんな非常時ですよ」
名前を知らない、深夜勤組の初老の男が荒い声で言った。
「こ
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