憎悪との対峙
35 星の幻影
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吹き飛ばないように自分の体とベルトで括りつけているのだ。
無理やり密着させている状態だが、それ以前にメリーはぐったりとスターダストの背中に身を預けていた。
一刻の猶予も無い。
時間を確認する余裕も無く、海の上の高速道路から僅かに見える水平線に沈む太陽と真っ暗な周辺から時間の経過を感じ、焦りを覚える。
自分の通ってきた道はEMPで街灯がダウンしていき、正面から見れば暗闇を引き連れて迫って来るように見える。
「…」
スターダストはEMPによって交通を混乱させ、追跡を撹乱するつもりだった。
そしてそろそろいい頃だと判断し、左手でユーティリティーベルトのEMP発生装置のスイッチを切って再びハンドルを握ると前方を走るバスを抜き去る。
このスピードでは長い時間、片手を離すことが出来ない。
これは免許も持っておらず、覚えたての自分が運転しているからではない。
ひとえにマシンのスペックが高過ぎるのだ。
プロのレーサーでも無ければ扱うのは難しい、もしフルスペックを引き出そうとすれば彼らでも吹き飛ばされてしまうだろう。
そもそもが普通の人間が乗ることを前提としていないじゃじゃ馬なのだ。
まさに怪物と呼ぶにふさわしかった。
前方にはインターネットがダウンしてニホン全体がパニックを引き起こしているというのに、いつもに日課と言わんばかりに暴走運転をしている時代遅れの暴走族が進路を塞ぐように走っていた。
「ん?ありゃなんだ?」
「どうした、タク?」
「いや?バックミラー見てみろよ!」
「え…あぶねぇ!!」
高速で迫ってくるスター・イリュージョンに驚き、皆がほぼ同時にハンドルを切って道を開ける。
だがスターダストは抜くと、少しスピードを緩めた。
「何だ、こいつ!?」
「おい!てめぇ!!どこのグループの連中だ!?」
スターダストはこれ以上のスピードはメリーに負担を掛けると確信した。
いくらヘルメットのシールドを下ろしているからといっても呼吸に影響を与えかねない。
しかしここでスピードを一般車並みに落とすわけには行かない。
むしろもっと加速しなければ、手遅れになる。
『バトルカード…スーパーバリア!』
スターダストはバトルカードをロードし、自分とメリー、そしてスター・イリュージョンをバリアで覆った。
これによって今まで体中に突き刺さっていた空気の抵抗が一瞬で消え去る。
「あと少しだ…」
スターダストはクラッチを握って、シフトペダルを踏み上げ、ゆっくりとクラッチを繋ぐと更に加速する。
もうついてこれる者はいなかった。
少し後ろを走っていた暴走族も圧倒言う間に差をつけられ、気づけば視界から完全に消え去った。
その姿はスター・イリュージョンの名の通り、まるで地上を走る流れ星の幻影を見ているよ
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