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アスタロト
第一章
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の?」
「だから嫌なのだ」
 アスタロトはここまで話したうえでまた述べた。
「日本人に呼ばれるのはな。我々を悪とは思っていないのだからな」
「だったら来なかったらいいのに」
「召還されたら来なくてはいけない」
 声がまたしても憮然としたものになった。
「それが悪魔の掟だ。掟に逆らうわけにはいかない」
「じゃあ話を聞いてくれるよね」
 榮一はその憮然とした彼に対して尋ねた。
「だから呼んだんだし」
「断るわけにもいかない」
 アスタロトの声はさらに不機嫌さを増していた。
「それで何だ?」
 そのうえであらためて彼に問うた。
「用件を聞こう」
「実は好きな人がいてね」
「ふむ」
 ここでは榮一の話を真面目に聞いていた。
「それで力を貸して欲しいんだ」
「そういう話も苦手ではないが」
 アスタロトは恋愛の話を持ち出されてまずはこう述べた。
「だが。より得意な者もいるだろうに」
「シトリとかゴモリーとか?」
「わかっているではないか」
 どちらも魔王である。シトリは豹の頭に鳥の翼を持つ男の姿をしておりゴモリーは駱駝に乗った赤毛の美女だ。どちらも恋愛成就を得意分野としている。
「そちらを呼んだ方がいいと思うがな」
「それがね」
 ところがここで彼は言うのだった。
「その娘の趣味が変わっていてね」
「日本人そのものが変だがな」
「それでね。彼女が言うんだよ」
 ここではアスタロトの言葉は奇麗にスルーしていた。

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