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ブルーホリデー
第四章
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第四章

「来ないのよ」
「?どういうこと?」
「私。できたのかも」
 遂に言った。一言であったが。
「ひょっとしたらだけれど」
「何だ」
「えっ!?」
 驚いたのは久代の方であった。清司の何だといった素っ気無い言葉にかえって驚いたのだ。これは彼女の予想していないことであった。
「できたのって。僕の子供だよね」
「え、ええ」
「だったらいいよ」
 穏やかな顔に戻って笑うのであった。
「久代ちゃんが浮気するような娘じゃないってのはわかってるしね」
「いいの?本当に」
「結婚。するんだよね」
「それは」
「だって。子供ができたじゃない」
 結論としてはそうなるのだがそれでもそれを言う勇気はなかった。しかしそれを自分からあえて言ってみせたのが清司の男としての優しさであった。
「だったら。そうなるよね」
「あの、清司君」
 久代は恐る恐るその清司に問うてきた。
「私でいいの?」
「僕あまり言葉上手くないけれどね」
 はにかんだ顔を久代に見せてきた。その顔で彼女に応えるのであった。
「久代ちゃんだから。いいよ」
「いいの。私だから」
「うん。じゃあ聞くよ」
 今度は清司が尋ね返すのであった。
「久代ちゃんは僕じゃ駄目なのかな」
「清司君じゃなきゃ駄目って」
「そこはどうなの?僕と結婚するのって嫌?」
「い、いえ」
 慌てて首を横に振ってそれを否定する。こうしたところで嘘のつける久代ではない。それがその態度にもはっきりと出ているのであった。
「私も。清司君だから」
「そうだよね。じゃあそれでいいじゃない」
 また穏やかな顔で応えてみせてきた。
「これからも。宜しくね」
「ええ。これからも」 
 もうそれまでの暗い悩みは完全に消えてしまっていた。考えてみれば清司の性格ではこうなる。それを考えずにただ一人悩んでいた自分が馬鹿に思える。しかしそれもまた終わろうとしていた。何もかもが幸せに包まれようとしていたのだ。
「じゃあさ」
「ええ。今度は何?」
「お酒は控えた方がいいよね」
「あっ、そうね」
 彼に言われてそれにふと気付く。
「子供がいるのなら」
「そうだよ。けれど」
 清司はまたその優しい、穏やかな笑みで言ってみせてきた。
「食べるのはいいよ」
「パスタをね」
「さあ、どんどん食べて」
 そう言って今来たパスタを勧める。来たのはペンネアラビアータであった。赤いトマトとガーリック、そしてオリーブの中にペンネがある。久代の好物の一つである。
「それで。僕達の赤ちゃんの栄養にして」
「そうね。何かもう」
 にこりとした笑顔でまた言う。
「悩んでいたのが馬鹿みたい。清司君の言葉を聞いてそう思えてきたわ」
「悩むことなんてないんだよ」
 清司はまた久代に言うのであ
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