第四十話 目覚める記憶
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験動物以下の扱いから逃げるために少年は凄まじい機動で駆け抜ける。
『もうすぐだ…もうすぐ…』
門まで後少しというところで、少年の背中に鎌鼬が見舞われた。
『っ!!?』
胴を刻んだ風が背中を抜け、刺すような冷たさを齎す。
少年は身体から鮮血を噴き出しながら、地面に倒れた。
斬撃は動力炉から逸れていたが、相当の深手で思わず手からバレットが落ちた。
『あぁ…』
開いた目は前方の扉に注がれた。
越えれば自由だと思っていた門は無惨な瓦礫と化しており、代わりに1体のレプリロイドが立っている。
レプリロイドが大鎌を振るい、門を破壊したのだ。
長身で精悍な顔付きをした男で、双眸は鋭く、携えた大鎌と同質なものに感じられた。
そして戦場ではきっと映えるであろう、鮮やかな紅いボディ。
レッドアラートのリーダー、レッドである。
『手間取らせおって…』
背後からやってきた研究員が呟く。
忌ま忌ましげな顔は、イレギュラーに勝るとも劣らぬ容貌であった。
『残念だったな。お前の脱走劇もここまでだ』
『ぐっ…』
立ち上がろうにも力は尽きていた。
今は傷の痛みに耐えるので精一杯である。
『あの方がいればこんな失敗作など出来なかったというのに…』
研究員は髪を引っ張って起き上がらせる。
身体の痛みとその痛みが少年を苛む。
レッド『おい、相手は怪我人だぞ』
『はっ…貴様の知ったことではないわ。こいつは失敗作だ。私がどうしようと勝手だろう!!』
『や…めろ…』
『貴様…まだ偉そうな口を開くか!!お前は出来損ないの失敗作なんだよ。まだ完成していない出来損ないだ。そんなことも分からないのか、ええ!!?』
『ふざけるな!!僕をモルモットみたいに扱って!!勝手に生み出して勝手に殺して…何様のつもりなんだ!!』
頭突きが研究員の顔面に直撃した。
予期せぬ反撃を受けた研究員は無様にひっくり返った。
『はっ…ざまあないね…』
嘲笑うと、激痛に苛まれる身体を引きずりながら必死に出口に向かう。
『僕は自由になるんだ…こんな所で死んでたまるか…』
肉体を凌駕する精神力を前に、レッドは呆然となる。
彼は満身創痍の少年を前に微動だに出来なかった。
少年が脇を通り抜けようとした時、ようやく我に返った。
レッド『待て!!』
振り返った少年の顔は憎悪に満ちていた。
少年にはレッドが、自由を奪う元凶のように思われたからだ。
その身を翻すと一気にレッドに肉薄した。
肉弾戦は重量によるところが大きく、少年とレッドでは体格が違い過ぎる。
少年の力ではレッドを動かすことすら出来ないと思われたが、少年は小柄な身体からは信じられない程の力で、レッドを突き飛ばすと
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