二十話 動乱
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「…神那…」
狂夜はただ、目の前に倒れている女性を見る。
白夜には、わからない。
狂夜がここにいる理由もこの女の人が死んでいる理由も。
「…狂夜…」
そこにいた白髪の幼い少女…星花は狂夜を見ずに眼を閉じた。
「…なぁ…星花…」
狂夜はいつもと変わらない穏やかな声で淡々と問う。
「…?…」
星花は狂夜を見た。
その瞬間。
星花は蛇に睨まれたように固まって震え出した。
「神那はどうしたんだ?」
平淡な声。
しかし、瞳は光を喪い、
暗い紅が広がっている。
星花は、震えながらゆっくりと狂夜から目線を外して言った。
「…死んだ…」
狂夜はその発言に対し、一瞬瞬きをしてから言った。
「はぁ?」
狂夜は「心底どうでもいい」と言うような顔を見せた。
星花の中の狂夜と言う存在が揺れた気がした。
「俺が言っているのは、どうやって殺されたか、だ。死んだのは見て解る。」
星花は驚愕して眼を見開く。
(…どうして!?)
星花は、目の前にいる狂夜と言う男を再び、見た。
いつもの狂夜と変わらない。
心の後味の悪い『何か』を必死に噛み殺して答えた。
「…死亡理由は、わからない。」
星花の一言に小さく舌打ちして、ポケットから何かを取り出した。
携帯電話だ。
狂夜は手慣れた手つきで携帯を弄り、その携帯を耳元まで運んで電話をした。
「…親父か?」
『………ああ。』
「お前らの組織に関わる大変なお知らせがある。」
『………』
「神那が死んだ。」
狂夜は、ごく当たり前のことを言うように言った。
『………』
「…死体処理班を派遣するよりも速く俺がその死体を持ってきてやる。…だから一つ条件を飲め。」
『…なんだ……』
「俺を幹部に入れろ。」
『…いいだろう。』
狂夜は、相手が条件を飲んだ瞬間に電話を切った。
「…幾斗達に言っといてくれ。神那は俺が連れていく。そして……」
狂夜は、星花に小さく言った。
「じゃあな。」
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