終幕 拝啓、私の妹
2幕
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待ち合わせはチャージブル大通り。ジュードは腕時計で時間を見た。待ち合わせ時間まであと10分あるが、すでにその場には仲間が集合していた。
誰も口にはしないが、それだけルドガーとエルに会えるのが楽しみなのだと、ジュードは知っていた。
「あ、来ましたよ!」
エリーゼが一番に明るい声を上げた。
腕を組んで大通りを歩いてくるのは、スカイグレイのスーツ姿の男と、パフスリーブワンピースに鍔広帽子の少女。
「若手実業家と人気モデルってとこかね」
「並んでてもぜんっぜん違和感ないって気づいてないよね、二人とも」
「なんだかメロドラマみたいです」『お似合い〜?』
もちろん皆、ルドガーとエルの関係は知っている。知って、〈今〉の二人の意思を尊重しようという結論を出した。二人がもし男女として想い合うならば、応援しようとも。
「みんな〜! お待たせ〜!」
エルがルドガーと腕を組んだまま、もう片方の手を元気に振った。
「お久しぶりですっ」
「おひさー。エリーゼ、背伸びたね」
「ほんとですか!?」『わーい!』
エルとエリーゼが両手の平を合わせて、きゃっきゃとはしゃぐ。可愛らしい少女が仲良くし合う風景は、それだけで心華やいだ。
「エル、かわいいワンピースですね」『お嬢様みた〜い』
「えへへ。こないだルドガーが新しいの買ってくれたんだー」
「よく似合ってるよ。エルはスタイルがいいから、こういう服でも違和感ないね」
「……スタイルがよかったのはフェイだよ」
「あ…」
ジュードとエルの間に気まずい空気が流れる。それを払拭したのは、
「さすが、クランスピア社の新社長様は羽振りがいいね〜」
アルヴィンだった。彼はルドガーの肩に馴れ馴れしく腕を回した。
「絡むなよ。これだって普通の店でマネキンに飾ってて、エルに似合いそうだなーって思ったから買ったんであって」
「ルドガーさんもなかなかムッツリですな」
「いわれなき疑惑!?」
「まあまあ。あれ? ユリウスさんは一緒じゃないの?」
レイアが遅まきながら周りを見回した。
「現地集合。仕事が終わるタイミングが合わなかったから。悪いけどもうちょい待ってもらっていいか?」
「仕事ならしょーがないね」
「まったく、我が兄ながら困るよ。もうちょい仕事量減らせって、社長権限で命令すべきか?」
「さすがにそれは……」『ショッケンランヨーじゃないのー?』
「ぐ」
少し前まではいつもの、今となっては久しぶりの、この騒がしさ。ジュードはこっそり微笑んだ。
今日はエレンピオスの空も青い。リーゼ・マクシアもいつかは霊勢の偏りが消え、こんな青い空をどこでも見られるようになる。
人と精霊の日々は今も続いている。
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