第三章
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れでも清司と共に行くのであった。こうしてそのイタリアンレストランに二人で行くのであった。洒落た内装にイタリアの音楽であるカンツォーネが鳴っている。如何にもといった感じの明るい店であった。そのままイタリアの明るさを入れたかのように。
久代と清司はその中で一つのテーブルに向かい合って座っている。久代が壁側に座っていて背中を丸くさせている。ここでも浮かない顔のままであった。
「乾杯だね」
「ええ」
清司は勢いがあったが久代のそれは弱いものであった。その彼女に清司が言うのである。
「ところでさ」
清司は一杯の赤ワインを飲んだ後で久代に尋ねてきた。
「どうしたの、今日は」
「今日はって?」
「だから気付いているんだよ」
清司は穏やかな声で久代に尋ねてきた。
「何か。悩みがあるんだよね」
「それは」
「隠さなくていいよ」
清司の方から言ってきた。
「何かあるのなら。言ってみてよ」
「それは」
「あるのならね」
また穏やかな声で言うのであった。
「よかったら言って」
「それは」
「あるのかな」
まるで誘うかのように穏やかな声をまた出してみせてきた。
「どうなの、そこは」
「それはね」
どのみちここで言うつもりであった。だがそれでも決意することができなかったのだ。だがここで彼の言葉を受けて久代は背中を押された。それが決め手となったのであった。
「実は。最近」
「どうしたの?」
「驚かないわよね」
弱気だったがこう前置きしてきたのであった。
「何があっても」
「うん」
彼はここではまだわかっていなかったがそれでも頷くのであった。
「約束するよ。何?」
「私ね」
久代も緊張で強張るのであるが清司もまた緊張で強張っていた。それまで穏やかな顔であったのが今では張り詰めた空気の中にあった。その中で話を聞くのであった。
「あれが来ないの」
「あれって?」
「だから。あれが」
恥ずかしくてさらに俯くがそれでも言うのであった。
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