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『自分:第1章』
『不倫』

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こんな苦しみ『普通』に育ってきた人間達には何一つ解って貰える筈が無いと、解られてたまるかと、打ち明ける存在は居なかった。
そんな零那に気付いたのが、ユウが連れて来る『兄貴』だった。

最初会ったときに『やっぱどっかで会ってるよね?零那が高校の時たぶん俺会ってるで!覚えてない?』って言われてた。
ユウに、零那の事(島や施設、高松や松山に居た事など)を聞いてたらしい。
で、その子たぶん知ってる!って言ってたらしい。
正直、見覚えが無い。
記憶に無い。
大体、年齢的にもそうやけど覚えやすい人。
ヤクザの息子やし。
ホンマに会ったことがあるなら忘れるわけが無い...

そんな不信感を抱いてたのも束の間だった。
ユウの目の前でメアド交換しよって言われ、堂々と交換した。
零那の弱さを見透かされ、心を開いてしまった。
互いに育児の悩みは尽きんかった。
嫁に対する愚痴を零那が聞くこともあった。
昼休憩にはユウとジャレてる時の写メ送ってきたり。

ユウは会社員。
でも兄貴は其処の会社員ではなくて、下請け会社やってるらしい。
だから2人の現場が違うこともある。
移動も、兄貴は自分の軽トラ。
だから多少の融通が利く。

連絡が来て、待機時間中だったら、事務所の近くに来たりして少し話したり。
ユウのマザコン疑惑などなど、不満をぶちまけたり。
なんか、大人の余裕ってのを感じるせいか、零那自身が勝手に弱い部分などを見せてた。

娘に対する想い。
育児に対する悩み。
母親としての苦しみ。
嫁としての苛立ち。
情けない自分に対して、何をどうするべきか解らんくて泣いたことがあった。
溜まりに溜まったモノが溢れてしまった。

その時を境に、お互い不倫関係になってしまった。
それが『逃げ』だと頭では解ってた。
でも『好き』だと都合良く変換された。
アホやから、好きなら許されるとか思ったんやな。


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