第二章 彼と彼女の事情
第十五話 未来への扉、過去への誘い(いざない)
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第十五話
腕時計に目を落とす、試召戦争終結からまだそれほど時間の経っていないことが突きつけられる。
きっとCクラスは今頃、北原さんを核にして停戦条項を作っているのだろう。
私に強要されたということにすれば、それほど不利な内容の代物にはならないだろう。
そもそもFクラス側に寝返るという約束は、階段側から攻め込んだ一部のメンバーによって果たされたのだから、心変わりした首謀者率いる連合本隊への軽い罰だけで済むのではないだろうか。
それに何を言っても北原さんに事は任せたのだから(投げ出したという自覚はあるけど)心配はしていない。
和室の扉に鍵を掛け、上靴を脱いで畳敷きの部屋に上がる。
ただとにかく一人になりたいと思ったときは、あちらこちらを回るのだが、いつもいつも結局はこの場所にたどり着いた。
それは例に漏れることなく、今回も同様であった。
茶道や日舞で使われることが考慮され、防音効果が特に高い設計になっているこの和室はこの空間だけが世界から隔絶されたかのように、一人で籠もっているとき感じる。
私は決してにぎやかなのが嫌いなわけではない。ただ、部活の時は派手派手しい先輩方やお菓子だけを目当てに所属している同い年の部員たちを苦々しく感じるぐらいだ。
私はこの部屋に一人で居るのが何故か好きだった。
心が落ち着くから、という単純な理由だけじゃない気はしているが、それだけなのかもしれない。
知ったような口を利きたくはないからこんなことは人様には決して言えないだろうけれど。
襖の中に仕舞われている紫の布地の座布団を取り出し、その上で正座する。今更自分なんかが座布団を使っていいのか程度の自虐はしたくない。
一人で落ち着いて考えたいことが多々あるのだから。
今回の戦争でどう配置していたら勝てたのかというのもその中の一つ。
Cが参戦したのは隙をみてBから離反してFに付くためだった。
それが、(私の事情で)昼休み明けからBを勝たせなきゃいけなくなったのだから、考えるとすれば昼休み以降の、もっと言えばF代表坂本を目の前にしたときから自分はどう動くべきだったのか、だろうか。
いや、それより私は戦力の集中運用をすべきだったのだろうか。
階段側が『予定通りに』寝返ったことが最大の敗因であり、これさえなければ……
いや私はヴェルザンディを発動不可能にすることなど考えてもみなかった。
それは一体何故なのだろう。
少しでも根本に痛い目に合わせてやりたいと思ったのだろうか。
自分が脅迫されていたとしても、あの高飛車な付きまといに何とか一撃をと願っていたからだろうか。
ヴェルザンディ、北欧神話で現在を司るという女神で、向こうの言葉では紡ぐ者と云う意味を持つらしい。
私は、根本を叩き潰してこそ自分自身の今を、ひいて
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