第二部 文化祭
第55話 Party-go-round
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いよいよあたし達の出番が回ってきた。あたしは苦笑いを浮かべ、デュエットの相手である珪子に声を掛ける。
「さ、さすがに緊張するわね……こんなに人が来るだなんて、あたし聞いてないわよ」
「去年の倍以上は来てますね……席に座れなくて立ってる人までいてますし。もしかしてこれ、前代未聞なんじゃ……」
「け、珪子……逃げるんじゃないわよ……?」
「なっ……里香さんこそ、テンパって歌詞間違えないでくださいよ!」
「もう、2人とも喧嘩しないの。ほら、肩の力抜いて?」
舞台から戻ってきた明日奈が、可愛らしく左手の人差し指を立てて諭すように言う。
「落ち着いてみれば、案外緊張なんて忘れるものだよ。それに、仮に忘れられなかったとしても、緊張感を持つのは全然悪いことじゃないし」
「あ、ありがとう。やっぱり持つべきものはアスナね」
「ふふ、どういたしまして。でも、そこは親友って言ってほしかったなあ」
片手を口許にあて、明日奈はくすくすと笑った。あたしは明日奈の頭を撫でるようにぽんと叩くと、珪子を振り返って言った。
「それじゃ、行こっか」
「……はい!」
* * *
歌い終わり、わっという歓声と拍手が巻き起こる。その光景に、あたしの目からは思わず涙が溢れた。
観客席を見回すと、もう何ヶ月も顔を合わせていなかった家族や親戚が、泣きながら拍手していたのだ。一際大きく、歓声を上げて。
──あたし達の頑張りは、無駄じゃなかったんだ。
しかし、ここで満足してはならない。あたしにはまだ、1曲ソロが残されているのだ。
あたしは涙を拭うと、観客席に向かって大きく手を振った。ありがとう、と心の中で叫んだ。
「里香さん」
隣であたしの名前を呼んだのは、もちろん珪子だ。珪子が軽くウインクする。
「すっごくよかったですよ! あたし、生まれて初めて人前で歌ってて楽しいなって思えました。次はあたしのソロですから……里香さんの番はまだ先ですし、それまでゆっくり休んでいてくださいね」
あたしは「生意気シリカめ」と言うと、にこっと微笑む珪子の頭をわしゃわしゃ掻き回した。
「もう、なにするんですか里香さーん! あたしこれから、1人で歌うんですよっ」
「知ーらないっと。ま、頑張んなさいよ、珪子」
「もー……えへへ、はーい」
あたしが珪子の小さな背中をどんっと押すと、珪子は舞台のど真ん中で転倒した。観客席にたちまち笑い声が響き渡った。
* * *
「珪子たーん!」
「シリカたーん!!」
「最高ー!」
アイドルばりの歓声にすっかりスイッチが入ってしまったらしい珪子は、
「えへへ、みんなありがとニャ!」
などと
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