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シスター
第一章
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「はい」
 華子は頷いた。
「私。どうしたらいいんでしょうか」
「そうだね」
 彼は一呼吸置いてからそれに答えた。
「まずは少し様子を見たらどうかな」
「様子を、ですか」
「相手が本気かどうかね。見極めてから」
「佐藤君は本気じゃないんですか?」
「あくまで可能性の一つだよ」
 彼はそう断ったうえで述べた。
「男ってのはね。案外曲者なんだ」
「はあ」
 男である自分が言うのも何だと思った。だがどうやらこの華子という娘はこうしたことははじめてだ。疎いなどといったレベルではない。ではこう釘を刺しておくのも悪くないと思ったのだ。
「騙したり、嘘をついたり。そうした生き物なのさ」
「怖いんですね、男の子って」
「まあね」
 彼は言った。ちなみに彼は相手が男の場合はそのまま男の部分を女に変えて説明をする。男も女も互いを騙すものだ。シニカルなものである。男心も女心も同じもの、所詮は風の中の羽根なのである。いつも変わるものだ。嘘と偽りに満ちたものである。しかしそれを見極めることこそ恋なのである。修治は自分のことはさておき華子にはこう言おうとしていたのである。
「怖いものなんだよ、男ってのは」
 彼は真剣な顔でこう言った。
「だからさ」
「それはどうでしょうか」
 しかしここで教会の礼拝堂の横の扉が開いた。
「!?」
 修治はその開かれた扉に目をやった。するとそこにあのシスターがいた。修治が恋焦がれ、話すらできないでいたあのシスターだ。彼女が今自分の前に不意に姿を現わした。一瞬心臓が止まりそうになった。


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