第四章
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から」
「御免」
「駄目、許してあげない」
謝罪に対する真紀の返事は厳しいものであった。
「折角だから。覚悟してね」
「覚悟って?」
「女の子のはじめてはね、高いのよ」
またえらく使い古され、それでいて効果のある言葉だった。
「甘えさせてもらうんだから」
「そんなこと言ったら僕だってさ」
売り言葉に買い言葉だった。光弘も反撃する。
「はじめてだったんだよ。それはお互い様じゃないか」
「そっか」
真紀はその言葉にはっとした。
「そういえばそうよね」
「そうそう」
光弘は言い返す。
「お互い様なんだよ」
(実際は違うけれど)
自分の方が子供だから。もう真紀が子供にはとても見えなくなっていた。背丈の差はあれど。
「だから」
「わかったわ。じゃあそういうことにしといてあげる」
真紀はその言葉にずっと笑って言った。
「けれど今日は」
「今日は?」
「送ってね、家まで」
「うん」
腕を組んでもたれかかってきた真紀に応える。結局自分より大人になっている真紀に途中から最初から最後まで主導権を握られっぱなしだった。けれどそんな真紀が本当に好きになってしまっていた。冬の寒さの中でそれを感じた。
(若しかすると)
また心の中で思った。
(真紀ちゃんを変えたのはこの冬の寒さかも)
ホテルに入る直前の寒いから暖まろうという言葉を思い出したのだ。
(だとしたら)
この寒さに感謝することにした。真紀を変えてくれたこの寒さに。自分にそれを気付かせてくれたこの寒さに。
生憎自分は変わってはいなかったが。真紀は変わっていた。美しい大人に。冬の夜空に感謝する寒い夜のデートであった。
季節が君だけを変える 完
2006・5・29
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