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季節が君だけを変える
第三章
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第三章

 その肩は柔らかかった。それに暖かかった。今まで気付いていなかったが思っていたよりずっと大人の香りがした。その香りが彼の心を決めていた。
「次に行くところさ」
「うん」
「俺達付き合ってそろそろ一年半になるじゃないか」
「そうよね」
「それでさ、その」
 どうにも顔が赤くなる。中々言えない。
「それでさ、あの」
「あの?」
「まだ高校生っていってもさ。もうすぐ、その十八だし。いや、まだなってないけどね」
 真っ赤な顔のまま何とか言葉を出す。
「けれどもういいと思うんだ。ほら、もうすぐ三年だし」
「ホテルってこと?」
「えっ!?」 
 真紀の不意打ちにやられた。身体も顔も硬直する。
「私と。ホテル行きたいの?」
「い、いや、あの、それは、その・・・・・・」
 慌てて何か言い繕うとする。しかし人間というものは核心を突かれると脆いものだ。この時の光弘がまさにそれだった。もう自分でも何を言っているのかわかっていなかった。
「あのさ、真紀ちゃん」
「ずっと待ってたのよ、私」
「へっ!?」
「光弘君が言ってくれるの。ずっと待ってたのよ」
「待ってたって」
「もう、言わせないでよ」
 今度は真紀が頬を赤くさせた。少しムッとした顔になっていた。
「私だって女の子なのよ。だから」
「いいって・・・・・・こと?」
「そうよ。ずっと待ってたのに」
「はあ」
 どうやらここは光弘の負けのようであった。しかもこうしたことでは真紀の方がずっと大人であった。待っていたというのであるから。
「何時誘ってくれるかって待ってたのよ。お家にも呼んだのに」
「お家ってさあ」
「だから。それはオッケーの印なの」
「そうだったんだ」
「女の子が男の子自分の部屋に入れるんだもの。何でわからないのよ」
「だってさあ」
 完全に光弘がやり込められていた。こうなってはもうどうしようもなかった。
「それで。何処にするの?」
「それは」
「私は可愛い部屋がいいけれど」
 顔を赤くさせて俯いて言う。この時は子供に戻っていた。
「それでも。光弘君に任せるわ」
「有り難う。それなら」
「けれど、優しくね」
「えっ!?」
「私、何も知らないから」
 処女であるということだ。
「キスとか。本当に知らないから」
「僕もだよ」
 光弘も顔を赤くしてそれに返した。
「僕だってさ。何も知らないよ」
「何も知らない同士ね」
「うん。けれど」
 頬を右の指でかきながら言う。
「宜しく教えてね」
「変な言葉」
 真紀はそれを聞いて思わず吹き出した。
「それって女の子が言うものよ、普通」
「そりゃそうだけど」
「何でそんなこと言うのよ」
「それはね」
 言おうとしたが止めた。
「いや、何でもないよ」

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