第二章
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第二章
実はキスもまだだ。当然そこから先もない。真紀もそれは知ってるだろうがとにかく子供なのでそうしたことには縁がないのだ。結局光弘はそこにも不満を覚えるのだ。とにかく真紀の子供っぽさの至る所が嫌になってきていた。この映画館でもそれは同じだった。
「これからどうするの?」
映画館を出ると真紀は光弘に尋ねてきた。
「これから?」
「ほら、だってまだ早いし」
時計を見ればまだ四時になったばかりである。彼女は光弘から少し離れてふらふらと歩いていた。本当に幼子の様に。
「まだ遊べるよ」
「そっち門限何時だったっけ」
「特にないよ」
真紀の親は娘にはかなり甘い。そんなもの設けてはいないのだ。そのせいか真紀はかなり無用心だ。そのうえ無防備だ。ここも子供っぽいと言えばそうなるか。無邪気と言うべきか。
「そうなの」
「まあ九時までには帰ろうかなって」
やはり甘い。普通の家なら九時が限度だろう。こんなことで大丈夫なのかとさえ思える。光弘はそんな真紀の無用心さに心配さえ覚えていた。
「あのさ」
「何?」
真紀は光弘の言葉に顔を向けてきた。
「あまり遅くまで出歩かない方がいいよ」
「大丈夫よ」
「何でだい?」
今度は彼が尋ねた。
「だって光弘君がいるから」
「俺が?」
「一緒にいてくれるから。大丈夫よ。お父さんとお母さんにもそう言ってるし」
「そうなんだ」
だがまだ釈然としないものがある。それについて尋ねることにした。
「けどさ」
「今度は何?」
相変わらず疑うことのない無邪気な顔である。
「俺だってさ」
「光弘君私を守ってくれるよね」
「へっ!?」
その言葉に思わず呆然となってしまった。
「だから安心してるのよ。夜遅くまでいても」
「はあ」
ここまでくるともう何も言えなかった。
「私だって一人だったら嫌よ、だって何があるかわからないし」
それは二人でも変わらないんじゃないか、と光弘は思ったがそれはやはり口には出さなかった。黙っていた。
「けれど二人だから。安心してられるの」
「そんなものかな」
「それで。何処行くの?今度は」
「何処って言われてもなあ」
光弘は困ってしまった。実はデートはこれで終わりにするつもりだったのだ。ましてや九時までとなると。彼にはどうしていいかわかりかねていた。
困っていると急に風が吹いてきた。そして二人を襲う。
「うわっ」
「きゃっ」
光弘は帽子を押さえる。真紀は髪を。とりあえず彼の帽子は無事だった。
だが真紀は。少し困った様子になっていた。目にゴミが入ったのだ。
「大丈夫かい?」
「うん、今取れたから」
眼鏡を外してゴミを取っていた。それはもう取れたようである。
「いきなり吹いてきたから。びっくりしたわよね」
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