第一章
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光弘のことが好きなのだ。それなのに自分だけが思っているからと別れるのもまた嫌だった。それでもその子供っぽさにうんざりしだしているのも事実だった。どうしようか考えていた。そしてあれこれと考えているうちに時間だけが過ぎていく。この時もそうであった。
映画は気が付けば終わっていた。何かあっという間だった。
「面白かったね」
真紀は屈託のない顔で光弘に声をかけてきた。お菓子もあらかた食べ終わり映画館を後にする時だ。
「まあね」
光弘はやや無表情にそれに応えた。
「あんなものかな」
「すっごい迫力あったし」
「うん」
それはそうだがどうも陳腐な演出に思えた。
「主人公も格好よかったし」
「それはね」
だがどうにも動きが激しいだけだった。演技に荒削りな部分が多かった。
「ヒロインも綺麗だったし」
「本当にね」
綺麗は綺麗だがあまり光弘の好みではなかった。やはり子供っぽかったのだ。
「ビデオになったらまた観るわ。その時私のお家に来て」
「いいの?」
「ええ。だって皆いるし」
「そうだね」
これもまた嫌だった。何が楽しくて恋人の家族と顔を合わせなくてはいけないのか。どうにも気まずくなるだけだった。けれど真紀はそんなことには気付かない。まるで友達を紹介するような感覚なのだ。そこがやはり子供っぽいのだ。
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