第六楽章 呪いまみれの殻
6-2小節
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ません。窓口で買いましょう。すみませーん。
最近多いのよね。こうやって日常のちょっとした動作が、すこーんと頭から落ちて無くなること。
代金を払って切符を受け取る。列車は、ええと改札を抜ける時に切符を入れる。うん、これはまだ覚えてますわ。
列車に乗って、適当な座席に腰かける。目指すはディールです。
ディール駅で降りたわたくしは、真っ先に駅のコインロッカーを目指しました。次の《レコードホルダー》に必要な物はいつもここに預けてありますの。
その「必要な物」を入れたギターケースを持ってお手洗いへ。
ギターケースから出したニット帽を被って髪を全部入れる。帽子の上からゴーグル。フィットネス用の本格的な品ですよ。テレビ通販で紹介されたのを買いましたの。
このくらい人相を隠さなきゃ。わたくしだとバレたら会社で恥ずかしいじゃないですか。
さて。これで準備は整いましたから、後は次の《レコードホルダー》に任せましょうか。
ちょっと怪しい風体でも気にしない。駅からディールの広場へ直行です。うん、ここはいつでも人でいっぱいね。
《レノン》、もう出て来てよくてよ。
「《待ってました! きーてください!》」
勢いよくギターをケースから出して、弦を掻き鳴らすピック。――いつやっても不思議なものね。わたくしができないことを、わたくしの体がスムーズに実行するのは。
わたくし、音楽はクラシック派ですのよ? それが、彼の《レコード》が宿って以来、週一でギターを弾かないと二の腕がわきわきするようになってしまいましたの。
――こんなふうに、《レコードホルダー》がやりたいことをやらせてあげるのが、わたくしの休日。わたくし自身のための休息日なんて、何年取っていないことやら。
でも《これ》だって自己満足じゃないって言い切れませんの。記憶だけ覚えて、後の《レコードホルダー》の思案など無視すればいいと、ユリウス室長もリドウ先生もおっしゃいます。
でも、できないんです。
だって、今はこんな形でしか、彼らが生きた証を残せないんですもの。
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