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銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第四十四話 仕官
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大切な人とは会えたのかと訊いたつもりなのですが」
なるほど、そういう意味か。自分の勘違いに可笑しくて笑ってしまった。久しぶりに笑った気がする。
「会ったのはローゼンリッターの隊員と他に一人だけです。ハイネセンは小官には危険でした」

ブラウンシュバイク公が“そうですか”と言って大きく息を吐いた。
「裏切ったと疑われているのですね」
「そうです」
今度はリューネブルクが小さく息を吐いた。多分自分が同盟から逆亡命したことが影響していると思ったのだろう。確かにそれは有るだろう、しかし根本的な問題は同盟政府が目の前の人物の恐ろしさを認める事が出来ない事に有る。俺達は同盟を裏切ってはいない、だからこそ目の前の男の恐ろしさが分かる。第七次イゼルローン要塞攻略戦はこの男の所為で敗れた……。

「辛い事ですね」
ぽつんと言った公の言葉に思いがけず胸が痛んだ。リューネブルクも切なそうな顔をしている。妙な事だ、同盟人よりも帝国人の方が俺を、俺達を理解し憐れんでいる。リューネブルクは俺達を裏切ったというのに……。後ろに控える三人の顔にも俺への同情が有った。

「それで、如何します? あくまで同盟に対して節義を貫きますか、それとも帝国で新たな人生を歩みますか。どちらを選んでも大佐を非難する人間は居ないと思いますが」
「お言葉に甘えまして帝国で新たな人生を歩みたいと思います」
「それは大佐だけですか、他の隊員も?」
「捕虜になった三十五名、全員の意思です」

ブラウンシュバイク公が頷き、そしてちょっと心配そうな表情をした。
「ハイネセンのローゼンリッターとはこの事を話したのですか?」
「帝国で仕官するかもしれないとは伝えました。彼らも理解してくれています。そうするべきだと或る人物に勧められたのです」
公が“或る人物”と呟き訝しげな表情をした。

「ヤン・ウェンリー准将です」
「……」
公の表情が幾分厳しくなった。なるほど、エル・ファシルの英雄はブラウンシュバイク公といえども無視出来ないか。となると事情を詳しく話した方が良いだろう。

「我々が帝国で仕官すればハイネセンのローゼンリッターは我々を非難出来る、旗幟を鮮明に出来ると言うのです。今のまま、裏切ったのか裏切っていないのか、はっきりしないまま疑われているのではどうにもならないと言われました」
「なるほど、確かにそうかもしれませんね。しかし非情では有る、大佐達もハイネセンのローゼンリッターも辛い思いをする事になります」
ブラウンシュバイク公が俺を気遣うような目で見ていた。思わず視線を伏せてしまった。この男は俺達の、亡命者の苦しみを理解している。

「我々の仕官、認めて頂けましょうか」
「もちろんです、歓迎しますよ、シェーンコップ大佐」
“閣下”と公の後ろから声がかかった
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