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銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第四十四話 仕官
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対して強い不満が有る事も認識していた。しかし自分に説明していた時は穏やかで誠実そうな表情をしていた。まさかそのような事を考えていたとは……、自分は公の説明をそのままに受け取っていた。

「ブラウンシュバイク大公とリッテンハイム侯は公の提案の真の狙いを理解しているのでしょうか」
「おるまいな。卿同様理解してはおるまい」
「では公の目論み通りになれば……」
諍いが起きるのではないか、そう思ったがリヒテンラーデ侯は首を横に振った。

「誰も公を責められまい。公からの提案は良く出来ておる。貴族達がまともなら没落する貴族は居ない。居ても少数の筈だ。そして政府は財政を健全化し平民達も開発の恩恵を受けられる。貴族達が予想以上に愚劣で貪欲であった場合にだけその全てが無に帰す。それでも公を責められるか?」
「……」
答えられなかった。確かに責める事は出来ないだろう、自業自得だ。

「それに公自身白を切るであろうよ。こんな事になるとは思わなかったと言ってな。或いは開き直るかな、それがどうしたとでも言って。まあ私の考え過ぎという可能性も有る」
リヒテンラーデ侯が苦笑を浮かべた。

「では公からの提案は」
「受け入れる」
リヒテンラーデ侯がきっぱりと断言した。
「どれだけ馬鹿が多いか、皆が認識する良い機会よ。それに何処かで貴族は抑えなければならなかったのだ。少々手荒いが理はこちらに有る。躊躇うべきでは有るまい。この問題は先延ばしには出来んのだ。何より、公をこれ以上怒らせるのは危険だからの」
リヒテンラーデ侯がほろ苦い表情で笑った。



帝国暦488年  4月 30日  オーディン  ブラウンシュバイク公爵邸  ワルター・フォン・シェーンコップ



「どうした、緊張しているのか」
「そんなことは無い」
「そうか、なら良いんだが……」
リューネブルクがちょっと心配するような口調で話しかけてきた。或いは本当に心配しているのか。ハイネセンからオーディンに戻った。そして俺はブラウンシュバイク公爵邸の応接室で公を待っている。同席者はリューネブルク、なんでこいつと並んで座らなければならんのか……。

ガチャっと音がしてドアが開いた。ブラウンシュバイク公が部下を三人連れて入って来た。リューネブルクと俺は立ち上がって敬礼した。公が答礼する。礼の交換が終ると三人で席に座った。三人の部下は公の背後に立った。護衛だろう。
「お待たせしたようですね」
「いえ、それほどでもありません。ワルター・フォン・シェーンコップ、帰還しましたので御挨拶をと思いお邪魔しました」
ブラウンシュバイク公が頷いた。

「如何でしたか、ハイネセンは」
「あまり思わしくは有りませんでした」
公が困ったような表情をした。
「いえ、そうではなく懐かしい人、
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