第四十四話 仕官
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ラーデ侯が紅茶を飲んだ。だが表情は苦い。
「損失を被るという事は政府に納める十パーセントの金が出せないという事になります」
「領地の開発資金も出せぬ」
「という事は」
恐る恐る問い掛けるとリヒテンラーデ侯が厳しい目で私を見た。
「領地経営に失敗したという事よ」
やはりそうなるか……、だとすると……。
「取り潰しですか」
「まあ少なくとも領地の取り上げは避けられまい。今政府に金を借りている連中と同じ扱いになるのではないかな。取り潰しでは反発が大きかろう」
「なるほど」
政府から金を借りている連中から領地を取り上げるのはその所為か。前例が有る以上貴族達も反対は出来ない。そして政府は領地を接収し直接税の増収により財政を健全化させていく。政府の力も強くなるはずだ。しかし貴族達が大人しく従うだろうか、混乱が生じかねん。ブラウンシュバイク公はその辺りを如何考えているのか……。
「もっとも条件はかなり悪い」
「と言いますと」
「運用に失敗したのだ、資金はかなり減っておろう。貧乏貴族と言われかねんな」
「なるほど」
領地を失った上に金も無いか、貴族達の影響力はかなり減る。
「如何なさいます」
「……」
「そのまま受け入れられますか。混乱が生じかねませんが」
私が問い掛けるとリヒテンラーデ侯が苦笑を浮かべた。
「代案が有るかな」
「……」
「代案が無ければ受け入れるしかあるまい」
「それはそうですが……」
「それにこれを拒否すればブラウンシュバイク公はこの問題から手を引くぞ」
「この問題を放置すると?」
リヒテンラーデ侯が含み笑いを漏らした。
「領民達が暴動を起こした時点で取り潰せと言うだろうよ。或いは領地の取り上げを主張するか、そちらの方が混乱するだろう。もっとも公の性格なら本当に遣りたかったのはそれかもしれん」
「しかし国務尚書閣下の御指摘にも有りましたが帝国は混乱します」
リヒテンラーデ侯が紅茶を一口飲んだ。
「貴族達が反乱を起こせばそれこそブラウンシュバイク公の思う壺だ。宇宙艦隊を使って反乱を潰すに違いない。そして領地も財産も全て接収する。今の宇宙艦隊の指揮官は下級貴族と平民だ。貴族達に遠慮はするまい、多少の時間はかかるだろうが財政難など一気に解決だな。カストロプ公の私財がどれ程であったか、卿も知っておろう」
「……」
リヒテンラーデ侯が低い笑い声を上げた。
「元は平民であったからの、何故自分が貴族達の不始末の尻拭いをせねばならんのかという不満が有るようじゃ。その思いを無視は出来ぬ。不満が募ればいずれは厄介な事になるからの」
「危険ですか」
「その思いを無視すればな」
リヒテンラーデ侯が頷いた。
外見は穏やかだが内面には激しいものが有るとは認識していた。貴族に
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