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本気になっていく恋
第四章

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第四章

「そこにいるの」
「そうか、じゃあ純文学とか?」
「古典研究してるの。紫式部日記とか」
 それだというのである。
「それ研究してるの」
「そうか、そっちなんだ」
「そうなの、文章難しいけれど中々勉強になるわよ」
 こうその匠馬に話す麻美だった。
「紫式部はな」
「俺そっちは知らないんだけれどさ」
「ええ」
「美術なら知ってるよ」
 彼の専門のそれである。
「マグリットとかね」
「ああ、シュールリアリズムね」
「ああいう絵が好きでさ。将来は学校の先生になるつもりだけれど。それか学芸員かね」
「いいんじゃない?それで」
「いいんだ」
「何か身に着けるのはいいことじゃない」
 だからだと言う麻美だった。
「それでね。そうなんだ、シュールリアリズムなんだ」
「うん」
 あらためて絵の話になった。
「それなんだけれどね」
「マグリットとかダリとかよね」
「マグリットが好きだよ」
 ベルギーの画家のルネ=マグリットだ。下半身が裸女の魚や空に浮かぶ巨大な岩の上にある城等。そうした現実にはない絵で有名である。
「あの感じがね。あとシュールリアリズムじゃないけれど」
「他には?」
「ヒロ=ヤマガタも好きだね」
「あっ、それ私も」
「ああ、ヒロ=ヤマガタ好きなんだ」
「ええ、大好きなの」
 そんな話をするのだった。二人も二人で楽しい話になった。
 それが終わってからだ。地和が仁に対して言う。今は店のビルの前である。
「これからだけれど」
「もう酒と食い物はいいだろ」
「ええ、それはね」
「じゃあ終わりだよな」
「何言ってるのよ、まだよ」
 しかしだった。地和はここでこう言ってきたのだった。
「まだやることがあるじゃない」
「あるのかよ」
「あるわよ。まず私達だけれど」
 笑って仁に言うのである。
「これからはね。二人でね」
「夜のデートかよ」
「久し振りにどう?」
 また話すのだった。
「それでね」
「ああ、いいなそれ」
「いいでしょ。あと麻美」
 自分達の話をしてからだ。そのうえで麻美に顔を向けて言ってみせた。
「あんたはね」
「私は?」
「あんたはあんたで楽しくやって。ああ、違ったわね」
 言った側からだ。自分の言葉を訂正させたのだった。
「あんた達ね」
「あんた達って」
「二人で楽しくやりなさい。いいわね」
「はい、それじゃあ」
 こう話してだった。強引に二人にさせたのだった。仁と地和はそのまま二人で夜の街に消えた。その時に手と手を絡めさせている。
 そしてだ。匠馬と麻美は二人になった。店のその前でだ。二人は顔を見合わせて話をするのだった。
「これからだけれど」
「どうしようかしら」
 麻美は少し困った顔になっていた。

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