―女王―
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【クリフォート】を使う戦士長を倒したのも束の間、闘技場のような場所で佇んでいた俺に対し、場違いな拍手が響いていた。ここが敵の本拠地である以上、戦士長以外の敵がいることは何ら不思議でもないのだが、そ拍手の音というのは良く分からない。
戦士長にやられた身体を無理やり起こしながら、俺は拍手の発生源へと身体を向ける。自分が今いる場所が闘技場のスタジアムならば、その音が響いているのは観客席の方からだ。
そして、観客席にいるのは――
「覇王……!?」
その正体について考える前に、口からその言葉が先に出る。リリィから敵の主は『覇王』と呼ばれる存在だと聞いていたが、確かにそこにいたのはまさしく《闇魔界の覇王》そのものだった。
「いかにも」
ずっと続けていた拍手を止めると、予想に反して覇王は理知的な声色で会話をし始めた。その手には特注のデュエルディスクが装着されていたが、覇王は観客席から降りてこようとする気配はない。
「いや、まさかあの戦士長を倒すとは。驚きだよ、これではもう私では勝てはしない」
「……それじゃあ、どうする気だ」
覇王と言えども、デュエリストの腕は未知数だと考えていたが、どうやら戦士長よりその腕前は下らしい。戦士長とのデュエルの疲労を隠すように、デュエルディスクを前に構えて威嚇するように声を発した。
「そうだなぁ……この世界から後退するしかない」
覇王は、あくまで軽くそう言ってのけてみせた。こちらの威嚇などには何の感情を覗かせることもなく。「ただし」と前置きをしながら、覇王は台本を読むかのように言葉を続けていく。
「戦士長に匹敵する実力を持った戦士がもう一人いるんだ。ソレと戦ってからにして欲しいな。君がソレに勝てば、我々はこの世界から手を引こうじゃないか!」
芝居がかった覇王の台詞にイライラして来るが、その条件を飲む気はさらさらない。わざわざそんな条件を飲まずとも、目の前にいる覇王を倒せば良い話なのだから。その人物が現れる前に覇王にデュエルを挑まんと、スタジアムから観客席へと走っていこうとしたその時、ギギギギ――と重い音とともに闘技場に繋がる扉が開いた。覇王と自分しかいなかった闘技場に、新たな闖入者が現れたのだ……この状況で仲間だとはとても思えない。
「…………」
しかして現れたのは、闇魔界のモンスターでもヒロイックのモンスターでもない。所属は分からないものの、その姿は天使族の融合モンスター《聖女ジャンヌ》であった。天使族らしい神々しい姿に目を奪われてしまうが、腕に装着されていたデュエルディスクを見て、すぐにジャンヌへと警戒の視線を送る。
ジャンヌは、そんな俺の様子を一瞥もせずに覇王の元へと歩くと、観客席にいる彼に対して膝をついてかしづいた。
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