―女王―
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「覇王様……侵入した戦士達の殲滅を完了しました」
「ふむふむ……あそこにはもう、誰もいないんだけどなぁ」
――その一言で俺はあらゆることを悟った。目の前にいる《聖女ジャンヌ》が敵であり、覇王の言う実力者であること。そして、捕らわれたデュエリストを救出しようとしていたヒロイックの戦士達の作戦が、デュエリストが囚われていない場所に誘導されて失敗したこと。ヒロイックの戦士達はともかく、リリィの安否が気になるところではあるが、今はそれどころではない。
俺を眼中に入れず、覇王とジャンヌは二言三言会話を交わし終わると、聖女ジャンヌはこちらに向けてデュエルディスクを展開する。
「さて、これが先程言った戦士長に匹敵する戦士だ。条件を……飲むかい?」
「ああ……!」
こうなれば覇王だけを狙うことは不可能だ。二人かがりで挑まれては適わないので、俺は口惜しくも戦士長の申し出を受け入れる。聖女ジャンヌに対して、こちらも負けじとデュエルディスクを展開すると、覇王がふと呟いた。
「……そう言えば君、こんな話知ってるかい?」
そう問いかけられるものの、そんな言葉はとんと記憶にない。覇王の言葉が続いているうちはデュエルする気がないのか、聖女ジャンヌはピクリとも動こうとしない。仕方なく覇王の言葉に耳を傾けると、覇王は嬉しそうに言葉を続けた。
「デュエリストを何十人ほど同じ閉鎖空間に閉じ込めてさ。最期の一人までデュエルさせるのさ」
ただのトーナメント制のデュエル……などという話ではない。俺たちの世界なら合宿か大会で済む話だが、この世界のデュエルとはすなわち、命がけなのだから。最期の一人になるまでの殺し合い――本来の意味でのバトルロイヤルに他ならない。
いきなり何の話なのかと聞き返すよりも先に、覇王は熱っぽく語り出していく。
「そして最期の一人を素材にモンスターと融合! これで良いデュエリストが生まれるんだ。……君たちの世界では壺毒って言うんだっけ?」
壺毒。器の中に多数の虫を入れて互いに食い合わせ、最期に生き残った最も生命力の強い一匹を使って呪いをする……という昔ながらの呪いのことだったか。そんなうろ覚えの知識ととともに、俺の脳内に最悪の想像が走った。まるで連想ゲームのようにその想像は、連鎖的に俺の脳内に入り込んで来る。
『デュエリストを何十人ほど同じ閉鎖空間に閉じ込めてさ。最期の一人までデュエルさせるのさ』――闇魔界の軍勢はデュエリストを捕らえ、どこかに閉じ込められていた。
『ふむふむ……あそこにはもう、誰もいないんだけどなぁ』――俺はそれを聞いた時は、捕らえたデュエリストをどこかに移動させたのかと思っていたが。そう奇をてらって考えるのではなく、本当に『いなくなった』のだとしたら。
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