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戦国異伝
第百八十四話 木津川口の海戦その六

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「神仏を篤く敬ってもおられる」
「そして謀もでしたな」
「それも」
「謀を使えば戦も楽に勝てる」
「それで、ですな」
「戦に勝つことも楽ですな」
「だからじゃ」
 元就は謀略を駆使していたのだ、戦に楽に勝てればだ。
 兵を失うことも少なく民が巻き込まれることも少なくなる。それで彼は謀を使っていたのだ。このことがわかったからだ。
「わしは殿にお仕えしたのじゃ」
「それで、ですな」
「厳島の戦に勝ち」
「それからもですな」
「殿にお仕えしておりますな」
「それでここまで来た」
 摂津の海、ここにまでというのだ。
「そして織田家ともな」
「戦をして、ですな」
「勝ちますな」
「そういうことじゃ」
 まさにというのだ。
「そしてな」
「これからもですな」
「勝ちますな」
「厳島で勝ち」
 そして、とだ。村上は言葉を続ける。周りではもう炮烙の用意が出来ている。
「ここでも勝ちじゃ」
「殿にですな」
「民の為に政をしてもらいますな」
「わしは政は少ししかわからん」
 こう言うのだった。
「海の政はわかるがな」
「陸のことがですな」
「どうにも」
「そうじゃ、それは殿の場じゃ」
 元就の、というのだ。
「だからな」
「殿にですな」
「是非共」
「わしとて戦はな」
 それはというのだ、毛利水軍を率いる彼でもだ。
「ないに越したことはない」
「その通りですな」
「戦なぞないに限ります」
「平穏に暮らしてこそですな」
「楽しみがあります」
「その通りじゃ、だからな」
 それでだというのだ。
「天下は泰平になって欲しいものじゃ」
「ではその為にも」
「この度の戦は」
「うむ、勝つ」
 こう話してだ、そしてだった。
 村上はまさにだ、織田家との間合いに入った。既に織田家の足軽達が鉄砲を構えている、だがそれでもだった。
 村上は舟を進ませた、そして。
 そのうえでだ、鉄砲を見つつ家臣達に対して言った。
「ではな」
「はい、では」
「ここは」
「屈むのじゃ」
 そうせよというのだ。
「よいな」
「屈んで鉄砲の弾を避ける」
「そうせよというのですな」
「そうじゃ、それに盾も出してな」
 木の盾、それをだというのだ。
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