第百八十四話 木津川口の海戦その三
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「二郎の策は正しい」
「命を粗末にするなと」
「その策はですな」
「生きねばならん時と死ぬべき時がある」
そして今は、というのだ。
「生きるべき時じゃからな」
「敗れることになろうとも」
「それでも」
家臣達も言う。
「生きることがですか」
「ここは」
「そうじゃ、二郎は正しい」
彼等に生きよと言ったことがというのだ。
「それでよいのじゃ、ではじゃ」
「我等はですか」
「ここは」
「見るぞ」
九鬼のその戦いをというのだ。
「あ奴の戦をな」
「畏まりました、それでは」
「この場は」
「見ようぞ」
こう言ってだ、そしてだった。
信長は九鬼のその戦いを見るのだった、やがて。
その毛利の水軍が来た、見れば。
織田家の舟はどれも青い、何もかもだ。それに対して。
毛利の舟は緑だ、柴田はその緑の舟達が青い海を進んで来るのを見て信長に対して言った。
「紛れもなくですな」
「あの舟達がな」
「毛利の水軍ですな」
「あの色とじゃ」
緑のその色と、というのだ。
「それにじゃ」
「家紋もですな」
舟には家紋もある、それもだった。
織田家の青い舟達には織田家の家紋だ、そして毛利家の緑の家紋には。
一の字の下に三つの点の毛利家の家紋にだ、それに。
吉川と小早川もある、しかもそれに加えて。
「あの家紋は村上ですな」
「そうじゃな」
信長はまた柴田の言葉に応えた。
「それもあるな」
「村上武吉も来ておりますな」
「村上水軍の総大将もな」
「あの者も来ておりますか、やはり」
「しかも吉川、小早川の家紋もある」
このことが示すことはというと。
「両川も来ておるわ」
「吉川元春、小早川隆景も」
「毛利元就はわからぬが」
毛利家の主であり二人の父である彼はだ。
「しかしな」
「その長子もですな」
「うむ、毛利隆元もな」
兄弟の長兄である彼もだというのだ。
「来ておるわ」
「毛利三兄弟が三人共ですか」
「それだけの戦ということじゃ」
「この度の戦は」
「毛利家にとってもな」
まさにだ、正念場だというのだ。
「滅ぶか残るかのな」
「そうした戦だからこそ」
「三人共出て来たわ、大きな戦になるわ」
「では」
「正念場はこちらも同じことじゃ」
織田にしてもというのだ。
「まずはこの戦じゃ、見ようぞ」
「畏まりました」
柴田は信長の言葉にこの時も応えた、そうしてだった。
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