第百八十四話 木津川口の海戦その二
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「あの国もな」
「讃岐、阿波、土佐に続き」
「四国は暫く三国だけを手中に収めておった」
織田家は数年の間そうしていた、しかしそれも遂にというのだ。
「しかし伊予も手に入れて」
「そうしてですか」
「四国も完全に治める」
「ここで」
「毛利を降し山陽と山陰もじゃ」
この二つの地域もだった、信長は毛利を降したならばこの地域もと当然の様に話す。そこには確かな考えがあった。
「手に入れるぞ」
「そして、ですな」
「うむ、西国の話が済めばな」
まだ九鬼に言う信長だった。
「御主は武田、上杉との戦の間にな」
「伊勢に入りですな」
「両家との戦が済めば東に向かえ」
今度はそちらにだというのだ。
「そしてじゃ」
「次は東の」
「小田原じゃ」
その場を目指せというのである。
「相模の海に出よ」
「東海の海を進み」
「駿河を竹千代が抑えたならな」
今は武田の領地だがだ、家康がそうすればというのだ。
「その時はじゃ、、よいな」
「畏まりました」
九鬼は信長のその言葉に応えて頷いた。
「その時は」
「天下は海からもじゃ」
「海もまた、ですな」
「陸からだけ治めるものではない」
「だからこそそれがしも」
「役に立ってもらう」
こう話してだ、そしてだった。
信長は九鬼との話を聞きまずは毛利の水軍を待った、すると二日後にだった。
毛利の水軍が来た、信長は船を出し家臣達と共に戦を見た、毛利の水軍は織田の水軍よりは数が少なかった。
だがそれでもだ、信長は彼等を自らが乗る船から見つつ家臣達に言った。
「数は毛利の方が少ない」
「それでもですな」
「その質はですな」
「毛利の兵は弱いが」
織田や北条と同じくだ、毛利の兵は決して強くはない。山陽や山陰の兵は近畿の兵とあまり変わらないのだ。
だが、だ。それでもなのだ。
「しかしじゃ」
「それでもですな」
「水軍は」
「毛利の水軍の主力は村上水軍じゃ」
彼等だというのだ。
「あの者達がな」
「強い」
「左様ですな」
「その質は我等より遥かに上じゃ」
織田の水軍よりもというのだ。
「だからじゃ」
「勝つことはですか」
「容易ではありませぬか」
「そうじゃ」
その通りだというのだ。
「そうそう勝てる相手ではない」
「その為にですな」
「あれを用意させたのですな」
「そうじゃ」
「ではそれは」
「今の戦の後で」
「この戦で勝てればよいが」
今からはじまる戦でだ、信長はそれが出来ればよいとした。
しかし彼はわかっていた、それ故に言うのだ。
「しかし雇ってばかりで碌に鍛錬もさせておらぬこの辺りの海賊達ばかりではじゃ」
「村上水軍には勝てぬ」
「そうなりますか」
「まず無理じゃ」
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