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乱世の確率事象改変
白が愛した大地
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 街を歩けば歌が聴こえた。
 毎日のように歌が聴こえた。
 男も女も、老人も子供も、気付けば何処かで歌を口ずさんでいた。
 この歌を禁ずる、と袁家からお触れが出ても歌が止まなかった。歌を歌って厳罰に処されるなど前例が無い。それでも袁家は禁じたかった。抑えられると思っていた。
 初めに罰されたのは元兵士だった。見せしめとして大勢の前で鞭打たれたはずなのに、直ぐに街にはその歌が溢れかえった。
 二人目、より厳罰をと触れ回った後……捕えられてより強固に鞭打たれたのは普通の街男であった。
 彼は捕まる時にこう言った。

『俺には力が無い。人を殺す度胸も無い。だから歌を歌うんだ。それがあの方に対するせめてもの恩返しだ。袁家が何だ。この声があの方に届くまで、俺達の想いを繋げてやらぁ』

 そんな報告を受けて、止まぬ歌に怯えた麗羽と斗詩は……禁ずるのを諦めた。
 これ以上厳しくするなら殺すしかない。しかし、殺してしまえばどうなるか、そんなモノは分かり切っていた。
 歌はもう止まらない。止まるはずがない。どの街でも、民がその歌を歌っていた。

 その歌に宿る想いは感謝だった。

“自分には何も出来ないけれど、せめて言葉で伝えたい”

 その歌に宿る想いは願いだった。

“何か一つでも力になれたなら、それはどれだけ幸せでしょう”

 その歌に宿る想いは祈りだった。

“愛してくれた感謝を込めて、あなたの幸せを祈っていいですか”


 その歌の詩は、民を愛した王に向ける歌。優しい優しいその歌は、愛して守ってくれた王に伝えたい想いのカタチ。
 無力な自分達でも出来る事は無いのかと、訴えかける願いの心。
 幽州の民は、白蓮の為にこの歌を歌い続けた。

 彼の河北動乱では、戦っていた王を助ける為に、その歌に励まされて奮い立った者達も居た。内部反乱は民の手から始まり、幾多の義勇軍が結成されていた。
 それを最後に止めたのは……皮肉にも、王と共に戦った兵士達。主の為を謳うかに聞こえる歌を耳に入れつつも、涙を流しながら、奮い立った者達に語った。

『片腕が命を賭けて白馬の王を助けたのはこの家を守る為である。命を散らすな。我らの王が帰還するその時まで』

 故に、彼らは歌う事をやめない。
 たった一つの歌が、この大地を変えていた。誰も予想出来るはずもない程に強固な絆で結ばれた、“彼女の為だけ”の大地へと。

 七乃が着いた時点ではもはや手遅れだった。むしろこんな中でも殺されなかった麗羽こそ、評価していいのかもしれない。
 暗殺の類は多々あったらしいが、それも袁家の財力を以ってすれば事前に防げる。
 南皮でのように街に出ること無く、麗羽はじっくりと、未来の為に内部改革のみを進めていたのだ。

 七乃は
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