白が愛した大地
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そうやって桂花は逸る心を落ち着かせ、ただ機を待った。
彼女達が使える曹操軍の兵数は……鳳統隊を含めて一万。元劉備軍の兵士の大半は徐州に置いて来た。兵糧の問題もあり、他の場所や内部への警戒も見逃せなかった為である。
ただ、今回二人で練り上げたモノは必ず成功する……そう確信していた。
その証拠に……桂花は一つの報告を見て口を歪めた。
――雛里に任せれば問題ないわね。張勲が何の為に戦っているか……それだけが問題だったんだから。
彼女達が戦に於いて優先して見極めたのは状況では無く……個人。
その報告には、一つの不幸な出来事が記されていた。
潜ませた間諜は方々に渡っている。幽州にも袁家にも例外なく、どんな些細な情報でも逃すまいと張り巡らせてある。
桂花は……夕の狙いがある程度読める。だからこそ、官渡の戦がどういった風に描かれるか……では無く、別の視点でこの戦を見ていた。
――袁家を変えるつもりになったなら、仲間は多い方がいい。だから夕は……華琳様を“殺さない”。華琳様を殺しては、曹操軍が全て従わなくなるもの。
広く遠い王の視点。王を傀儡に出来る程の才を持つが故の王佐。なればこそ、桂花は夕がそういった戦の勝利の仕方を狙うと読んでいた。
劉表が華琳を洛陽に引き摺り込んだのは、桂花にとっては嬉しい誤算である。絶対条件として華琳の敗北を求めているのに、それが出来ないとなれば袁家側は一手か二手、遅らせざるを得なくなっている。
ただ、華琳の気性も、桂花は誰よりも理解している。
彼女の主は覇王。己が手で勝利を掴んでこそであろう、そう考える。なら、例え劉表に縛り付けられようとも、戦の最終局面には、必ず華琳は官渡に向かうであろう、と。
その準備を、桂花と雛里は外からするのだ。官渡での小競り合いはあちらにいる軍師達に任せていい。彼女達の能力に対しては、それが出来るとの信頼を置いても居る。
そうなると、外から夕の思考を読み、崩すためにはどうするか……やはり一番の問題は七乃率いる袁術軍であろう。
こちらが攻めようとしても、幽州は馬の名産地でもある為に、多くの騎馬を有する部隊によって即座に後背を突かれてしまう。
そも、兵数では袁家が有利であり、余剰分を割けば、官渡からこちらに対して挟撃を仕掛ける事も出来るのだ。だからこそ、官渡に波紋を齎すには、幽州に居座る七乃をどうにかするのが先決であった。
民の暴動は利用出来る。以前に打った一手が、予想を大きく超えて機能していたから容易い。それでも、そんなモノを桂花達は使うつもりが無かった。
じっくりと、また報告を読み直した。簡素な報告は直ぐに読み切れる。
店長作の“カロリーメイト”を一つ手に取って食し、お茶を取って流し込む。そうしてまた、一寸だけ口を歪めて……さ
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